帰属意識の活用法 ~性暴力等からの回復や魂の視点も含め~:フェミニズム運動という契機

では、最後の3つ目は100分de名著(Eテレ)の「100分deフェミニズム」の回からのご紹介です!

この回ではフェミニズムというテーマの元に、翻訳家・文芸評論家の鴻巣 友季子 氏、歴史学者・東京大学教授の加藤 陽子 氏、社会学者・東京大学名誉教授の上野 千鶴子 氏、教育学者・琉球大学教授の上間 陽子 氏の対談形式で進められていきます。

そして、それぞれが自らで影響を受けた本を持ち寄り様々な意見を交わしていきますが、その中の「フェミニズムが見える化 性暴力」というテーマにおける上間 氏の担当から、そのごく一部ではありますが、私なりの整理の上で少しだけご紹介してみます!

 

上間 氏は沖縄でシングルマザーを支援するシェルターを設立しておりますが、ここで紹介されていたのが『 心的外傷と回復 』(ジュディス・L・ハーマン:著、中井久夫:訳)という本であり、特に性暴力を受けた女性や、性虐待を受けた子どもなどの心的外傷(トラウマ)を抱えた人々の間ではバイブルと言われているそうです。

このハーマン氏はハーバード大学出身の精神科医ですが、心的外傷の研究には3つの流れ(歴史)があると指摘します。

 

1つはヒステリーという視点であり、この言葉は子宮を意味するヒュステロンというギリシャ語に由来し、長い間、女性特有の現象とされて来ました。
その後19世紀末にフランスの神経科医ジャン=マルタン・シャルコーが本格的に研究に乗り出し、(生)化学的反応を持つ神経症の一種であると定義します。

更にこの研究を引き継いだのが精神科医のジークムント・フロイトですが、ヒステリーの原因が性暴力や幼少期の性的虐待にあると突き止めます(彼なりの仮説に辿り着く)が、当時ではヒステリーはありふれた病気とされ、その原因が先のようなものであるとすれば、そのような由々しき忌まわしい出来事が世に蔓延している事となり、その失望の元に研究を止めてしまいました。

これについてハーマン氏の著作では、

 

著作:
『 ヒステリーの心的外傷説が廃墟と化した中から、フロイトは精神分析を創始したのであった。
  二十世紀の心理学理論の主流は女性たちの現実を否認した、その上に築かれたわけである。 』

 

と指摘し、これは当時の心理学は(女性達などの置かれている)現実から《 目を背け続けていた 》事を意味しているそうです。
ちなみに、私の行っておりますヒプノセラピスト認定講座でも歴史を学ぶ場面で、シャルコーとフロイトにも触れております!

 

次は第一次世界大戦後になります。
この大戦では膨大な死傷者数を生み出してしまい、生き残った兵士達の多くが先のヒステリーとほとんど同じ症状を現すようになりました(例えば、イギリスの傷病兵の40%が精神崩壊を起こしたとされている)。
そして、これは「戦闘神経症」と呼ばれるようになっていきます。

その後も研究が続けられていきますが、ベトナム戦争でその沸点に達します。
帰還兵達の証言などから、これらの症状を発するのは戦争による影響(後遺症)と結論付けられ、1980年「外傷後ストレス障害 =PTSD」と名付けられました。

その一方で、1970年の中頃から女性運動の高まりが始まりますが、それについて、

 

著作:
『 女性と子どもの劣位と服従とは私たちの文化に深く根をおろしており、女性と児童への暴力が基本的人権の侵害であるという認識はごく最近のことである。
  殴打、ストーキング、性的ハラスメント、親戚知人によるレイプのような脅迫的支配は、いたるところに見られる行動パターンであるが、名前さえなく、犯罪だという認識など問題外であった。
  犯罪とされるようにしたのはフェミニズム運動である。 』

 

このような研究の流れから、性暴力等による心的外傷も戦争による心的外傷も《 本質的には同じである 》という事が分かって来ました。

著作:
『 今なお女性の従属的地位は男性のひそかな暴力によって押しつけられ維持されている。
  両性間で戦争が行われているということである。
  レイプ被害者、被殴打女性、性的被虐待児は戦死傷者である。
  ヒステリーは性の戦争における戦闘神経症である。 』

 

ところで、私は1973年の生まれですが、当時の自分を《 振り返って 》みても、そのような状況や状態に社会があった事には《 気づけておらず 》、確かに年齢や経験という側面もあるかもしれませんが《 (愛の反対である)無関心であった 》事には違いありません。

そして、戦争にせよ性暴力等にせよ、同じ本質であるという事であれば、現在謳われている多様性の尊重という視点に《 これ迄の反省など 》がちゃんと取り組まれ、組み込まれていると言えるでしょうか、、、
仏作って魂入れず 》になっていないでしょうか、、、

 

そして、このような症状はDV(家庭内暴力)や宗教カルトの生存者などにも当てはまり、鬱や自殺傾向、そして解離(乖離)などの症状を総称して「複雑性PTSD」とハーマン氏は名付けました。

では、ここで上間 氏の幾つかのコメントをご紹介してみます!