〇 「離見の見」の中の「離見の見」より引用と抜粋(1971年)
『 今いった記憶とか理解というような問題ですが、人間というのは、自分が意識している以上に、なにか知能の進化とか進歩というものを知らん間にやっている。
つまり、意識的にやっていることもあるけれども、無意識的な、潜在意識というか、そういうところの活動というものは、自分にもわからんから説明しにくいわけでありますけれども、これは非常にあるのだと思います。
創造性の問題と潜在意識の問題は、非常に関係があるのであります。
詳しく申しますと、時間がたりませんから、やめておきますけれども、たびたび引き合いに出します例は、アンリ・ポアンカレという大数学者の話です。
この人が、数学のあるむつかしい定理を証明しようと思っていろいろ考えたけれども、どうしても解決できない。
そこで一ヵ月か二ヵ月それを忘れてしまいまして、旅行に出たのです。
旅行に出て、どこかで乗りものに ~ 十九世紀の終わりごろのことと思いますから、馬車でしょうね、馬車に乗ろうと思って、足を段にかけたときに、パッと解決法を思いついた。
思いついて考えてみると、すらすらと問題は解けたということです。
彼自身の体験です。
そこで彼がつらつら思うのに、自分はその問題を一、二ヵ月すっかり忘れておった。
自分では忘れておったけれども、多分自分の潜在意識なるものは大いに活動しておったのではないか。
その潜在意識のなかである解決が思いつかれておった。
そしてそれが、ある拍子にパッと意識に上ってきたのではなかろうか。
こういうことを言っておるのであります。
まことに卓見でありまして、私も賛成であります。
さきほど停電して、ついて、きえて、という「たとえ話」を申しましたが、いまの話も、彼の場合にはいっぺんにパッとつきっぱなしになったように見えますけれども、その前にちょっとついて消えるという段階があったかも知れない。
それが何回もあるか、一回もないか、それはいろんな場合があるでしょうけれども、しかし私の言っているのとだいたい同じような意味のことだと思うのでありまして、停電しているあいだというのは、やはり潜在意識の活動があるけれども、それがパッと意識に出てこないということだと思います。 』
※ カウンセリング等をご検討の際には、私が登録相談員をしております以下のリンク先も参考になります。