終末時計でも手薄な!?ゲノムテクノロジー ~盲目にならない~

 

【 ゲノムテクノロジーについて 】

「ゲノム」とは体の特徴や機能を「細胞」レベルで決める人体の設計図の事です。

細胞の中には「核」があり、更にその中には二重螺旋の「DNA」があり、このDNAは「A・G・C・T」という4つの塩基(物質)の組み合わせ(配列)から成り立っています。

ゲノムの配列は何十億にもなる為、場所を特定し、その組み合わせを書き換える事は、以前には容易ではありませんでした、、、

 

【 「クリスパー・キャス9」の誕生 】

2020年にノーベル賞を受賞したカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ博士が、チーズやヨーグルトなどに含まれる乳酸菌などが持っている特殊なタンパク質を細胞の中に注入すると、簡単にゲノムの配列を変える事が出来る発見をします。

 

この特殊なタンパク質は特定のゲノムの配列を見つけ出し、その箇所を切断する能力があります。

そして、タンパク質に切断したい配列を覚えさせ細胞に注入すると、膨大なゲノムの配列の中から目的の箇所を見つけ出し切断します。

更にそれと同時に、新たに組み込みたい配列をタンパク質に注入しておけば、思い通りに配列を書き換える事が出来る事が分かり、これが「クリスパー・キャス9」という技術です。

 

この技術は医療分野のみならず食べ物等の分野にも既に活用されていますが、ジェニファー・ダウドナ博士は次のコメントをしています。

ジェニファー・ダウドナ博士:
『 クリスパー・キャス9は医療や農業など、あらゆる分野で使える技術です。 私はこれを誰にでも利用出来るテクノロジーにしたいのです。 これは世界を大きく作り変える事が出来る画期的な基礎技術です。 ゲノム編集はこれから益々加速していくでしょう。 』

 

 

【 「0(円)」に近づくゲノムテクノロジーの「コスト」 】

2021年の中国の全国人民代表大会で、2030年迄にゲノムテクノロジーを成長分野の大きな柱の一つとする事が決定されました。ちなみに、それ以前の2016年にはゲノム編集の特許数がアメリカを追い抜き中国が1位になった事実もあります。

 

そして、ゲノムテクノロジーが2030年迄に急速に進化(!?)を遂げていく背景の一因とされているのが「コスト」の変化です。

2000年には遺伝子解析コストに約100億円掛かっていたのが、コストが急速に低下し続け(格安になり続け)、2030年には限りなくコストが「0円」に近づくと試算されています。

ただ、この試算を導き出したアメリカのシンクタンクのマッキンゼーグローバル研究所が2020年に発表した報告書では、

 

【 遺伝子操作により個人が「未知のウイルス」を作り出し解き放つ可能性や、人間の受精卵のゲノム編集をし、子どもに望む特徴を持たせる、いわゆる「デザイナーベビー」などの倫理的な問題になる 】

 

などの懸念も同時に表明していました。

そのマッキンゼーグローバル研究所のマイケル・チュイ所長のコメントが次のものです。

マイケル・チュイ所長:
『 この技術は光と影が混在するパンドラの箱です。 使い方を誤れば人間の命に関わります。 どこかで倫理の線引きをする必要があるのです。 私達は次の10年、より良い選択をする為に、この問題に向き合わなければなりません。 』

 

 

【 デザイナーベビー 】

記憶にある人もいるでしょうが、2018年に中国の(当時の)南方科技大学の賀 建奎 副教授が人の受精卵をゲノム編集し「エイズウイルスに感染しにくい双子の女の子」を誕生させた、いわゆるデザイナーベビーを作ったと発表した出来事!?事件!?がありました。

発表会場では様々な質問が噴出し、厳しい批判も浴び、その後の賀 建奎 副教授は中国政府の取り調べを受け違法医療行為の罪で逮捕され、公の場から姿を消す事になります。

 

このデザイナーベビー誕生の発表を受け、国際社会で合意された法規制は無い中、世界の科学者達が作る国際委員会の報告書で『 この技術はまだ安全性が確立していないが故に、当面の間、ゲノム編集した受精卵で妊娠をさせてはいけない 』との声明を出します、、、

 

では、ここ迄はゲノムテクノロジーの《 経緯や変遷 》を眺めて来ましたが、詳しい仕組みや働きはともかく、何となくの実状(実態)が掴めていれば、それで大丈夫です!!!