【 取り残される先住権 】
更に耕一さんは「先住権」についての活動や取り組みも行っています。
先住権とは〖 暮らしていた土地やその資源などに対する権利 〗ですが、「アイヌ政策推進法」ではこの権利が一切認められていません。
そして、現在の法律では川で鮭を捕る事は出来ません。
この漁業権(先住権)についても取り組んで来ているのは二風谷のアイヌの人達だけではなく、浦幌町で生活しているアイヌの人達(それを支援している人々も含め)も精力的に取り組んで来ています。
浦幌町のアイヌの人達も国と北海道を相手に先住権を認めるよう裁判を起こしていますが、国と北海道は法的根拠が無いとの主張をし続けています。
ちなみに、世界各国でも先住民族達が先住権を求めて(復権の為に)裁判を起こし、その権利を勝ち取っているのが実状です、、、
【 支配が分断を招く 】
ここ迄は長男の太一さん、父の耕一さん、祖父の正さんの家族3代に渡る取り組みを見て来ました。
その上で、あくまで私が一番心や印象に残った一言をそれぞれ紹介してみます、、、
他界1ヶ月半前の入院中の正さんの残されていたインタビューから:
『 アイヌの精神文化がねぇ、自然と共に生き自然を大切にするという精神文化がやっぱり人間の本当の生き方だと感づいてきたんですよ。 それだけは誤魔化しでない。 ちょっと普通の人間には考えられないんだけど、この地球上には人間だけではない、キツネも住んでいる、それからカラスも住んでいる。 木にも神様が宿っているんだ。 アイヌの精神文化というのをやっぱり日本人にも分かって貰ってね、いい所を取り上げて、お互いに助け合って、今みたいに金さえ残せばいいというのを、もう無くさなければダメです。 』
耕一さんのインタビューから:
『 アイヌに対しての対応が良くなるだろうと思ったけど、30年経ったけどあまり変わらないね。 要するに日本の単一民族国家という思想は今でも残っているね。 皆同じだ、皆同じだ、平等だ、平等だという教育をされていると、アイヌ自身もアイヌである事を忘れてしまう可能性がある。 でもアイヌは一つの民族であり、独自の文化を持って独自の言語を持った民族であるという、アイヌとして語り継いでいかないとアイヌ自身がアイヌである事を忘れてしまう、それが怖い事ですよね。 』
そして、現在では「これだけ訴えて来ても何も変わらないのだから、お金を貰えて生きていけるのであれば、もういいんじゃないの」のように、アイヌの人達の中でも諦める人も増えて来ている傾向(国や行政等による分断の結果です)に対しての太一さんの言葉です。
太一さん:
『 拘(こだわ)らない事がとてもいい事に聞こえるんですけども、果たして、僕らの前の世代とかだって、差別で自殺したり死んだりする人が多くいたりして、死なないまでも本当に潰れていく人達は一杯いた。 それを、同じ状況を、それ(諦めの事)を言う人達が自分のおじいちゃんとかおばあちゃんにそういう事が起きたと考えた上で、本当にその言葉が言えるのかって、僕はいつも思う。 』
では、番組からの紹介はここで終了です!
ちなみに、先程の二風谷ダムの建設の際には「上流から沢山の砂が流れて来るのでダム湖はほとんど砂ですぐに埋まってしまう」との指摘が当時でも既にありました。
しかし、開発を進めていた側は「100年は埋まらないから大丈夫」と説明していました。
それから25年経過した現在、ダム内には大きな砂の陸地が出来上がっています、、、
では、ここからシンプルに締め括りをします!!!
【 今回の総括 】
現在では、アイヌにルーツを持つ若い世代の人々の中では、
アイヌとしてのアイデンティティ・・・日本としてのアイデンティティ・・・その両方を大切にしている・・・
という人が多くなって来ており、これはとても自然な事でもあり素晴らしい事です!
そして、これ迄のアイヌの人達の思いとしても、
アイヌ(人)としてのアイデンティティをしっかりと自分の軸や芯に据えつつも・・・
日本(人)としての自分を拒否していた訳でもなく・・・
和人(日本人)を毛嫌いしていたなども毛頭無い・・・
というのは、ここ迄の内容から理解して貰えていると思います。