コロナ禍の障がい者の環境とリトル・アマル ~知る、気づく、想像、経験~

では、次は生まれつき聴覚に障がいのある男性の方で、この方の場合では補聴器を付けると音の存在は認識出来るそうですが、言葉などは聴き取れないとの事です。
そして、これ迄は手話が通じない(出来ない)健常者と生活を共にして来たそうです。
と、言いますのも、

男性:
『 口の動きを読み取るのは生まれた時から、ずっと今もトレーニング中です。 』

 

と述べておられますように、相手の口の動きを見て言葉を理解し、コミュニケーションを取って来たそうです。
しかし、コロナ禍においては致し方ない面があるとは言え、マスク着用が当たり前になってしまいました。

男性:
『 マスクは聞こえない人にとっての天敵
  唇が見えないと自分の中のコミュニケーション方法が少し変わりました。 』

 

とおっしゃっておりましたが、この男性の方はラグビー教室で子どもさん相手に教える活動も行っているそうです。
しかし、このようなご時世ですので、子ども達の多くもマスクを着用しています。
つまり、マスクを着けたままでは、多くの子ども達がいる中で、どの子どもが話しているのかを見つけられなくなっていきました。
そして、それと同時に子ども達と話す機会も減っていったそうです。

男性:
『 (子どもがやって来ても、自分は)今みたいに挨拶しか言えないもどかしさがあるんですよ。
  中には自分から(マスクを)取って話してくれる子もいるけど、、、
  上手く言葉に出来ないですね、、、 』

 

こうして、この方は孤独を感じる場面が増えていったと感じている、とお話されておりました。
そして、更に、

男性:
『 (マスクが)大きな壁にもなっていますし、距離も取らないといけないし、コミュニケーションの輪に入れないので取り残された感はあります。
自分にとっては心の距離も、その分、離れているような気がします。 』

 

と。
そして、このような聴覚障がい者の方の状況を知る為に、あるNPO法人が健常者に向けての『 爆音コンビニ 』という催しを行いました。
これは、コンビニ内に大音量の音楽を流し、会話が出来ない(聴き取れない)環境で参加者がマスク姿の店員とやり取りをするという試みでした。
そして試してみた所、健常者(同士)においても意思が伝わらない場面が続出しました。
これに対し、ある参加者の方が次のように述べておられました。

参加者:
『 店員さんが最後、値段を口で言ってくれた時に、マスクが動いているのは分かったんですけど、何を言っているのか分かんなくて、、、
  たぶん、これ私も日頃、耳の聞こえない方にやっちゃっている事なんだなというのを思いました。 』

 

そして、この試みを主催したNPO法人の代表者の方は、次の点を指摘しておりました。

NPO法人の代表者:
『 本当にコロナ禍の間に、ものすごく聞こえない人達が抑圧されてしまって、(社会に)参加出来ない状態が出来てしまうみたいな事が、一番恐れてますね。 』

 

そこで、このNPO法人では《 声を見せて 》とのスローガンの元に、透明マスクを全国の企業や学校に無償配布をしたそうです。
そして、この透明マスクについて代表者の方は、

NPO法人の代表者:
『 この問題というのは困っている人(聴覚障がい者)の周りが(透明マスク)を着ける必要があって、ここに共通理解みたいな感覚が広がっていったら良いなぁって思いますしね。 』

 

と述べておられました。
ちなみに、この配布された透明マスクというのはアメリカで既に認可されているもので、上下は密閉されている為に感染対策にも有効とされているものだそうです。

 

そして、このような問題というのは、子どもさんにおいては、より大きな影響を与えています。