コロナ禍の障がい者の環境とリトル・アマル ~知る、気づく、想像、経験~

コロナ禍における長期化した緊急事態宣言等の影響により、街の状況が一変した事で視覚障がい者の方々が深刻な影響を受けました
そして、20年前に事故で視力を失った男性の方がいらっしゃり、その方は外出時は白杖(はくじょう)を頼りにし、お一人での外出時には周囲の様々な音を聴き分けて、自分の位置や進む方向などを確認しているそうです。
その方が街中の歩道上で次のようにお話になっておりました。

男性:
『 今こうやって(周囲から様々な)音がするじゃないですか。
  そうすると自分の位置で三角測量をして、まっすぐ歩いているなと、やってます。 』

 

そして、耳に残る特徴的な音(例えば信号機や車や電車の音、周囲の人々の会話など)から健常者ではほとんど意識していない音までを含め、耳の感覚(聴覚)を研ぎ澄まして歩行しているそうです。

男性:
『 室外機の音がするので近くにラーメン屋さん、今、券売機で買った人のお金の音がしたので(ラーメン屋さんとの)確認が取れている(という感じ)。 』

つまり、

 

《 「音」で「場所」を記憶している 》

 

との事であり、これを、

 

《 耳印・音印 》

 

と呼んでいるそうです。
この「言葉」は私も初めて聞き、目にしました。

しかし、コロナ禍における外出自粛や飲食店等の休業要請などで、このような街が発する音が急激に減少していきました。
この事により、この男性の方は外出するのが怖くなったそうです。
そして、あるカラオケ屋さんの前にて、

男性:
『 自分的には駅に向かって歩いているつもりで、今までだったらこの辺でカラオケの音がするんで、(自分がいるのは)この辺りかなという位置確認が出来たんですけど、全く今、その辺のヒントがない、耳印・音印がないので、非常に場所が特定しない状況で歩いています。 』

 

そして、最も危険な場所である横断歩道で、周囲に人がいない所では、人々の足音などのヒントがなくなり、横断歩道を渡れない事が増えていったそうです。

男性:
『 今まであった人の流れの音が消えてしまった。
  それによる雑音が聞こえなくなってしまったので、いきなり広い野原に置かれちゃったような状況になって、まるっきり空間認識がしにくくなった。 』

 

と述べておられました。
更に、道に迷った際などには助けが欲しい時でも、

男性:
『 コロナ前に比べれば声を掛けてくれる人自体は少なくなったとは思います。
  参ったなぁ~というのが率直な意見です。 』

と、これ迄であれば、

 

《 白杖を高く持ち上げる = SOSのサイン 》

 

を活用していたそうですが、コロナ以降では、

 

《 白杖にサポートを求めるシールを貼る 》

 

ようになったそうです。
このように視覚障がいのケースでは色々と困った状況になり、また、コロナ禍という特殊な状況でもありますので、全てが今まで通りにお互いに進める事が出来ない面があるのは致し方ない部分もありますが、ある郵便局では点字マットを店舗の入り口まで延長したり、また東京都内の9つの駅では、点字ブロックのQRコードをスマフォで読み取り、目的地までのルートを音声で案内する、視覚障がい者音声サービス《 shikAI(シカイ) 》の導入の取り組みも行われている事なども紹介されておりました。