現代の魔女狩りは次元を超えた??? ~責任転嫁やレッテル貼りが極まると・・・~

ハンス少年は学校で、悪魔に魂を売った男の物語を描いた『ファウスト博士』という本を読んでいました。
すると、教師から、誰からこの本を受け取ったのだ?と詰問され、家の召使いがくれたと答えました。
そして、名指しされた召使いは逮捕されてしまいます。

さらに、その召使いは、仲間の魔女を言え!など、身に覚えの無い拷問を受け続け、その苦痛から逃れる為に、単に知っている人の名前を告げただけでした。
その名前に挙がったのが、このハンス少年と、その母親であり、二人とも逮捕されてしまいました。

このように、ハンス少年はいわゆるブルジョア階級の家庭にいましたが、拷問により誰かの名前を告げねばならない為に、ここでも単なる知り合いの名前を出した事が、魔女の告発とされ、付き合いのある裕福な商人、政治家、神学者などへと連鎖していきます。

 

しかし、このような司教の仕打ちに対し、バンベルク市の市長であるヨハネス・ユニウスは断固として反対していきました。
しかし、その市長よりも、さらなる上の権力者であり、しかも魔女狩り推進の当事者でもあるゲオルク2世を止める事は出来ませんでした。
そして、ユニウスも逮捕・拷問を受けていきますが、ユニウスが獄中から娘に宛てた手紙には、次の事が書かれていました、、、

ユニウスの手紙より:
『 いとしい娘よ、私は厳しい拷問、激しい苦痛から逃れる為に自白してしまった。

  はじめに「サバトで誰を目撃したのか」と聞かれた時、私は「知らない人ばかりでした」と答えた。

  すると次は、「市場の通りから町の全部の通りを引きずり回せ」と命じられた。

  通りを引きずられながら、私はそこの家に住む人々の名前を次々に言わされた

  それが魔女の名前を自白する事になったのだ。 』

 

ここに挙げられた名前は35人で、ユニウスの知り合いの権力者や特権階級の人々が含まれていた事により、先ほどの連鎖へと繋がっていきました。
このように、その領地のトップであるゲオルク2世が魔女狩りの先導者でもあった為に、誰も彼の事を止める事が出来ずにいました、、、

しかし、1631年に、バンベルクを脱出した人々が、周辺の都市の大学などの学術者などに窮状を訴え、最高裁判所はゲオルク2世に魔女裁判を禁止する命令を出し、当時の戦争の影響などもあり、ゲオルク2世は町から逃亡し、バンベルクの民衆も魔女狩りをしなくなっていきました。

 

と同時に、ヨーロッパの各地でも魔女狩りを鎮める動きが出てきました、、、
その一端として、ドイツにおいて、関係者からの内部告発などが掲載された『検察官への警告』が発表されました。

この書は、ドイツ人司祭であるフリードリヒ・シュペーが執筆しましたが、自分の素性が知られると、これも自らが魔女狩りに合う危険性がある為に、敢えて「匿名」で発表したものです。
そして、この告発者たるシュペーは、処刑直前の最後の告白を聞く聴罪司祭という役割を担っていましたが、200人以上の無実の人々の悲痛を聞き続けた結果、自らの過ちに気づき、、、次のように述べたと言われております、、、

シュペー:
『 かつて私は、この世に多くの魔女がいる事について、全く疑わなかった

  しかし、今となっては、魔女はほとんど存在しないと信じている。

  魔女裁判がこのまま続けば、領地の村々は根絶やしとなり、戦争の被害よりも激しく荒廃する事になるだろう。

  そうなれば、どこの領主も魔女裁判を止めざるを得なくなるはずだ。 』

 

と。
このようにして、18世紀中頃ではヨーロッパでの魔女狩りは姿を消していきました、、、