まさか今に(現在に)・・・という落とし穴 ~マインド・コントロール(洗脳)から~

こうして様々な試みを進めていったキャメロンは1956年に、《 人間の白紙化 》を更に進化させた『 サイキック・ドライビング:精神の操縦 』という論文を発表します。

この《 サイキック・ドライビング 》とは、始めに患者に電気ショックを繰り返し与えて昏睡状態にし、その後に録音していた患者さんにとって嫌な記憶を伴う言葉(例えば、私はダメな人間だなど)を繰り返し聞かせるというものでした。
それに加え、感覚を鋭敏にすべく、行う際には目(視覚)を黒いゴーグルで遮り、手(触覚)をグローブで覆い、聴覚以外の余計な感覚をシャットダウンさせる事も同時に行われました。

この状態で患者は1日15時間、1週間連続で嫌な記憶を伴う言葉を聞かされ続け、その繰り返される再生回数は50万回にも及んでいきます、、、

 

こうして1週間が過ぎると、今度は何となく望ましく思えるような行動を伴う言葉(例えば、あなたは紙切れを拾うなど)を聞かせる事が行われます。
これを3日間聞かせ続けた所、患者は落とした紙切れを拾い、性格もおとなしくなり、指示に従うようになっていきました、、、と言うより、従うようになっていったと、、、「言われていた」そうです、、、

ここで行われていた事は、マイナスの言葉を聞かせ続ける事で《 人格(人間)を白紙化 》し、次に行動などの情報を脳に「書き込んでいく」という事が行われていました。
こうして、《 精神の改竄が可能になる 》と考えられていきます、、、

そしてキャメロンは自らの実験(治療)に確信を抱き、更に《 サイキック・ドライビング 》はカナダの新聞でも「役に立つ洗脳」と題されて取り上げられるようになりました。

すると1957年、冒頭で紹介したアメリカのCIA(アメリカ中央情報局)がキャメロンの研究に目を付けるようになっていきます、、、

 

と言うのは、1950年に資本主義と共産主義の対立から勃発した朝鮮戦争において、捕虜となったアメリカ兵士達が帰国を拒否し、共産主義を礼賛し始める事例が増加していた事により、この捕虜となった兵士達は洗脳されたのでは、、、とアメリカ国内では恐怖を感じ始める空気が渦巻いていた背景も重なっていました。

そこで、このような状況に対抗すべく立ち上げられた極秘裡の計画が先の《 MKULTRA(MKウルトラ) 》なるものとなっていきます、、、

この計画には多数の大学や研究機関、そして大勢の科学者等が集められますが、この計画を指揮したのが後にCIAの毒殺部長と称されるシドニー・ゴッドリーブという人物であり、CIAはキャメロンに1億円近い資金提供をして《 マインド・コントロール(洗脳) 》の技術をCIAの「懐(ふところ)」に収めようと目論見ます。

このようなCIAの目論見について、先のギルモア氏は次のように捉えております。

ギルモア氏:
『 CIAにとって、この上ない好都合だったのは(実験)場所がカナダだった事です。
  仮にこの研究がアメリカ国内で明るみになったとしても、自国民を対象にしている訳ではないので非難される確率が低いと踏んだのです。 』

 

こうして、キャメロン自身においても《 患者を治療するという目的の洗脳ではなく、、、洗脳する事そのものが目的、、、 》となっていきます、、、

 

そして、時を同じくした1957年、一人の患者が右の頬の長引く神経痛を診て貰う為に、この頃には「世界一の名医」と謳われていたキャメロンの元を訪れます。
するとキャメロンは精神疾患の一種である心因性によるものと断定し、この患者はここから3ケ月にも及ぶ《 人体実験たるサイキック・ドライビング 》の被験者にされていきます。

また、この他に判明している範囲だけでも数百人の患者が人体実験の被験者とされてしまっていた事が「後に」分かって来ます。
更に、当初は統合失調症などの重篤な症状に「限定して」行われていましたが、いつしか「症状を問わず」行われるようになっていきました。
ちなみに、この患者の神経痛の原因は帯状疱疹の後遺症による顔面神経痛であった事が「後に」判明します、、、

 

勿論、患者においてはあくまで《 治療 》を受けているのであって、まさか自分が《 人体実験 》の被験者にされているとは「露知らず」にです、、、