まさか今に(現在に)・・・という落とし穴 ~マインド・コントロール(洗脳)から~

では、話を戻しますが、1945年にキャメロンに大きな転機が訪れます。
それは、第二次世界大戦におけるナチスの戦争責任を問うニュルンベルク裁判において、戦犯の人達の責任能力の有無を判断する精神科医として招かれる事となりました。

そして、ドイツを訪れたキャメロンは、何故、普通であったはずの人達が残虐な行為に関与したり手を貸すようになったのかなどを検証していきますが、次第にナチスだけではなく、ナチスに協力した国民そのものを治療せねば、、、と考えるようになっていきます、、、

この点に関し、キャメロンの著作を執筆したジャーナリストのドン・ギルモア氏は次のように述べております。

ギルモア氏:
『 あまりにも多くの人々が自分の人生における意思決定を人任せにして、意思を持たず、自分が信じていないものに魂を明け渡してしまうという状況を社会が病んでいると感じたのでしょう。
  キャメロンは一種の「集団精神障害」だと考えたようです。
  個人の精神が如何に頼りない不安定なものかを思い知らされたのです。 』

 

そのような状況の中、1950年にキャメロンはある論文の中に治療法の取っかかりを見つけます。
その論文の内容は、人間に薬物を投与して昏睡状態にする事によって《 性格を作り直す 》というものでした。

そしてキャメロンは、精神疾患はトラウマという悪い記憶により脳がダメージを受けて引き起こされると考えるようになっていきます。
そこで、脳を攻撃し昏睡状態を作り出し、トラウマという記憶を消し去る事で精神疾患も消失するはずだと考え、これを《 人間の白紙化 》と名付けます、、、
そして、キャメロンは患者に色々な方法を実際に試すようになっていきます、、、

、、、段々と雲行きが怪しい!?方向に進んでいる感があるかもしれませんね(笑)

 

まず最初の方法として昏睡状態を引き起こす(作り出す)為に、幻覚剤である大量のLSDという薬剤が用いられましたが、昏睡から目覚めると再び精神疾患の症状が現れてしまいました。

次に試したのが電気ショック療法でした。
しかし、ここでは当時の基準の40倍もの電気の強さに設定し、2日に1回が限度とされていた電気ショックを20日間連続で行い、1ヶ月近く昏睡状態にさせたりなどを試していきますが、しかし、これも効果は長続きしませんでした。

そして、1953年6月、キャメロンはついに治療法のヒントを掴みますが、それは偶然の産物とも呼べる代物でした、、、

 

当時、統合失調症の女性の患者がキャメロンの元に通院していましたが、彼女は夫と両親に激しい敵意をむき出しにしてしまうという症状があり、キャメロンはテープレコーダーを廻しながら彼女に色々な質問をして治療を行っていきましたが、彼女は本心を決して明かさない状況が何度も続いていました。
ところが、ある日の治療で、彼女は幼い頃に母親から虐(しいた)げられたトラウマの記憶を初めて語り出します、、、

彼女の口からは、、、実は私は母に脅されていたんです、、、との言葉が飛び出し、キャメロンが録音したその言葉(音声)を再生して彼女と共に確認すると、僅かに彼女の顔が歪み出し、動揺し始める素振りなどが現れた為に、キャメロンは嫌な記憶を伴う彼女自身から発せられた言葉を何度も繰り返し再生して聞かせる事で脳の記憶を攻撃出来るのではないかと考えるようになっていきました。

 

そこでキャメロンはこの録音された言葉を執拗に繰り返し繰り返し再生して彼女に聞かせ、15回目で彼女はようやく脅された事実を認めますが、その後も聞かせ続ける事30回目で彼女は、、、お母さんなんて大嫌いよ!、、、と話しますが、キャメロンは更に重ねて聞かせ続け、40回目で彼女は止めて欲しいと懇願し取り乱し、その後も続ける事45回目で彼女は泣きながら、、、先生の前で嘘なんかつきません、、、と再生を止めて貰うようお願いし始めました。

キャメロンは、この彼女の状態を《 性格が随分と素直になった 》と捉え、ついに先程の《 人間の白紙化 》に成功したと思い至り、手応えを感じるようになっていきます、、、

そして、その後も4人の統合失調症の患者に同様に試し、全員が取り乱した後に素直になったとキャメロンは判断していくようになり、こうして自信を得たキャメロンは《 人間の白紙化 》を更に改良すべく、今度は寝ている間に習得したい言語をマスター出来ると紹介されていた睡眠学習の記事に目を付け始めます。

その理由として、睡眠状態でも脳は働いている、、、いや、、、むしろ起きている時よりも新しい情報を受け入れやすいのではないか、、、とのものでした。