必要悪は存在するのか!? ~私掠免許を介したカリブの海賊と国家の共依存~

1713年にスペイン継承戦争が終結しますが、これによりイギリスが乱発した私掠免許がまたしても無効になり、私掠船は廃業に追い込まれ、多くの船乗り達は失業してしまいました。

すると、今度は《 手の平返し 》のように船主であるイギリスの貴族や商人などが悪徳業者と化していきます。
一つには船員が《 有り余っている 》事から、運良く職に就けたとしても報酬(給料)を搾取(50%もの賃金カット)されてしまったり、また一つには、船長は《 経費削減 》と称し船員達の食費を切り詰めたり(船長自らは豪勢な食事のまま)、船長自らの《 鬱憤晴らしや気晴らし 》の為に船員を鞭打ったりなどの虐待(今で言う所のパワハラなども含め)を繰り返す船長が《 後を絶たない 》状況でした。

つまり、船員達は先程の年季奉公人(と同じ境遇)に《 逆戻り 》してしまいました。

このような仕打ちに対し「当時の船員の手記」では、

 

『 理不尽な支配に対する憎しみが、その後のオレの人生を決めた。
  国家がオレ達を使い捨てにせず、法的な支援をしてくれたなら、これほど多くの船乗りが海賊になることはなかっただろう。 』

 

と書かれております。
こうして失望や絶望の淵に立たされ、船乗りの5人に1人、2000人ほどが《 再び 》海賊となっていきました。

そして、国家や(悪徳)商人などの理不尽な支配に立ち向かう1人の海賊が登場して来ます!

 

その三人目の海賊とは、人呼んで海賊の先生と称されるイギリス人のベンジャミン・ホーニゴールド(1680-1719)です!
彼は皆さんも名前だけは一度は聞いた事があるかもしれない、悪魔の申し子とも言われる「黒ひげ」エドワード・ティーチ(1680-1718))の師匠でもあります。
皆さんの中にも小さい頃にタルに剣を刺す「黒ひげ危機一発」のオモチャで遊んだ方も多いかもしれませんね!?(笑)

 

彼は輸送船を襲う度に、その船員に対し『 お前の船の船長はいい奴か? それとも悪い奴か? 』と問い掛け、船員が良い船長と答えると船長にボートを与え食糧を渡して解放しますが、悪い船長との答えが返ってくると、、、皆さんのご想像にお任せ致します(笑)

このような親分肌でもあり、船員の事を大事にする彼の元には続々と海賊達が集まって来ました。
そして、幾ら財宝等を略奪しても先程の悪徳商人に掛かっては換金する事も出来ない為、彼はバハマ諸島にあるニュープロヴィデンス島に新たな拠点を造り上げます。
ちなみに、この島は当時はイギリス領でしたがスペインの攻撃を受け、荒廃した状態のまま放置されていました。

 

1715年に彼はこの島を海賊団の拠点と定め《 他の海賊団も誘い 》、2000人もの海賊が集まる町として復興させました。
すると《 お金の臭い 》に釣られ(欲に目が眩んだ悪徳)商人なども集まって来ましたが、《 悪徳商人であるからこそ自分達の事を役人に密告しない 》であろうとの《 魂胆 》も彼にはあったそうです(笑)

しかし、お金(の臭い)に釣られたのは商人のみならず、何とイギリス政府が《 利権を手に入れよう 》と島に行政官を送り込んで来ました!

そこで彼は行政官の家に出向き、海賊仲間に手を出したらタダじゃおかないぞ!!!と脅迫した所、行政官は即座に島から逃げ出してしまいました(笑)

 

そして彼は町の住人達に、この島はイギリスから《 見捨てられた 》ので自分達海賊で守っていく!と宣言します。
そして、1715年に海賊の自治区となったこの島は、