必要悪は存在するのか!? ~私掠免許を介したカリブの海賊と国家の共依存~

ところが、1655年イギリスがカリブ海での貿易拠点を築く為にスペイン領であったジャマイカ島に侵攻し、国の財源となる大規模なサトウキビ畑を開拓しますが、そこでは強制的に働かされた数多くの人々が存在しておりました。
この人々は「年季奉公人」と呼ばれ、植民地の地主に雇われた期間限定の白人奴隷にされた人々でした。
ここには、本国で多額の借金を抱えた貧民や失業者、そして犯罪者などがあてがわれ、カリブ海に送り込まれました。

当然ながら今のように人権(という意識)なども存在せず、過酷で劣悪な環境で働かされる日々が続き、このように死んで行くくらいなら犯罪者になる方がマシだと考えた年季奉公から逃げ出した人々などが無法者と呼ばれる海賊となっていきます。
こうしてカリブ海一帯は無法地帯と化していきますが、無法地帯とは言え海賊行為は犯罪であり、イギリスやスペインなどの国家の役人に捕まれば処刑されてしまいます。

そのような中で、次第に個性溢れる!?海賊達が登場して来ます!

 

まず一人目としてイギリス生まれの策略家と称されるヘンリー・モーガン(1636-1688)なる人物が登場します!

彼は15歳の時に年季奉公人としてイギリスからカリブ海に送り込まれますが、当時の海賊達の多くは稼いだ(略奪した)お金を酒場や娼館(しょうかん)で使い果たす事が常でしたが、彼はお金を節約し貯金し続けていきます。
そして、30歳の時にジャマイカ島で小さな農園を買い取り、農園の地主であり貴族でもあるジャマイカ総督一族の娘と結婚します。

こうして築いた地位を元に、海賊とは真逆?相容れぬ?堅実な計画の元に、33歳で彼は「私掠免許(しりゃくめんきょ)」なるものを手に入れます。

実は、彼が海賊らしからぬ生活を送っていた《 真の目的(真の動機) 》が、この私掠免許を手に入れる為だったと言われております、、、

 

この私掠免許とは、イギリス国王から貴族や商人などの金持ちの船主に発行される略奪許可証の事であり、言わば国家公認の海賊免許と称されているものです。
この免許があれば、当時のイギリスの宿敵であったスペインの輸送船などに対し、幾ら略奪や残虐な行為や殺人などを犯しても罪に問われないという代物でした。

その一例として、当時のスペイン領であり財宝輸送拠点の一つであったポルトベロという難攻不落の砦と言われた港町を460人の海賊を引き連れて彼は襲いかかりますが、スペイン軍の激しい反撃により、なかなか攻略出来ずにいました。

そして、スペイン軍の兵士の多くが敬虔なカトリック信者である事に目を付け、彼は町にある教会や修道院から神父や修道士や修道女を集め、いわゆる《 人間の盾 》として利用し、スペイン軍が発砲出来なくなってしまった事によって砦を落とし町を征服し、その後1ヶ月に渡り拷問や強奪や殺戮や陵辱を尽くし、莫大な財宝の数々を手に入れました。

 

そのようなモーガンにイギリス王室は騎士(ナイト)の称号を与えジャマイカの副総督に任命しますが、一方のイギリスという国自体(今で言う所の政府)も私掠免許を発行するだけで海賊達が勝手にスペインの船を襲い略奪し、それにより植民地がぼろ儲けしイギリス本国も潤っていくという悪循環(負のスパイラル)に陥り、これによってカリブの海賊達が《 続々と生み出されていく 》事となりました。

言わばWin-Win(ウィンウィン)とも呼ばれるイギリス(政府)と海賊達との《 共依存 》が築かれていったとも言えるでしょう、、、