必要悪は存在するのか!? ~私掠免許を介したカリブの海賊と国家の共依存~

では、続けて参りますが1692年に敵対していたイギリスとスペインが突如として和平を結び同盟国となります。
これにより先程の私掠免許は無効となり、海賊の取り締まりが強化されるようになっていき、《 逆に 》カリブの海賊達は追い詰められていきます。

そのような中で登場して来たのが二人目として取り上げるヘンリー・エヴリー(1659-1696)です!

彼は《 元々は 》海賊を取り締まるイギリス艦隊の兵士でした。
しかし、ある夜、彼は船長が眠っている事を見計らい、自分が乗っている船を勝手に出航させ、《 今ここから 》は自らが船長であると宣言します!

 

そこにあった《 真の動機 》は兵士でいるよりも海賊になった方が大儲けが出来るとのもので、一夜にして彼は船長の座と85人の手下を手中に収めました。
そして、取り締まりが厳しいカリブ海を避けインド洋へ向かい、そこであらぬ限りの略奪行為等を行っていき、440人の手下と6隻の船を従えた大海賊へと変貌を遂げます。

そして、略奪した財宝等を6隻の船にバラバラに積んでいると手下の中で盗む者がいるかもしれないとの事で、自らの率いる船に全てのお宝を積み、自らが守るという宣言をしました。

 

しかし、彼はある真夜中に残りの5隻の船と手下を置き去りにし、お宝を自分一人のものにして逃げ出してしまいます。

そして、彼は余生を過ごす為に故郷のイギリスに戻り、現金に換える為に持ち逃げしたお宝を町の(悪徳)商人に預けますが、《 逆に 》これ迄に彼がして来た行為を役人にバラしてやると脅迫されてしまいます。

結局、彼はほとんどの財産を騙し取られ、ほぼ無一文のまま他界しました、、、

「類は友を呼ぶ」との言葉もありますが、やはり《 自分のした事は自分に反ってくる 》との証かもしれません!?

 

このように私掠免許も剥奪され、取り締まりが強化されるにつれ海賊達の数は減少していきますが、《 またしても国家の都合 》により海賊達の運命は変えられていきます、、、

1702年、イギリスとスペインの関係が再び悪化し、スペイン継承戦争(1702-1713)が勃発します。
海軍力ではスペインに劣ってしまうイギリスはこの戦争に勝つ為に、《 再び 》私掠免許を乱発させていきます。
この結果、1600隻以上の船が私掠船となりスペインの輸送船を襲っていきます。

まさに「バブル経済」とも言えるような、海賊達にとっては大儲けのチャンスが到来した事になります(笑)

 

が、しかし、事はそう単純に運んで行きませんでした。
と言うのも、略奪品の分配方法がイギリス政府により《 勝手に 》変えられてしまったからです。
それは次のようなものです。

 

「イギリス政府が10%」を受け取る

残りの90%を「船主が30%」「船長が30%」「他の全ての船員達が30%」

 

と、このように決められてしまいました。
が、しかし、例えば船員が50人乗船していると、船員1人の取り分が「0.6%」になってしまい、船長の取り分と比較すると「50分の1」となります(笑)

 

結局の所、《 旨い汁を吸った 》のは船主と船長、そしてイギリス政府という《 権力を握っている 》者達だけでした、、、

言わば船員達にとっては聞かされた《 甘言(理想)と現実 》があまりにも違い過ぎたと言えるかもしれません、、、
「良薬口に苦し」との言葉もあります(笑)

そして更にこの後も国の勝手な都合(制度変更)により海賊達は《 振り回されて 》いきます、、、