「動機」を捉えるとは・・・ ~麻酔という医療特許と精神医療の身体拘束のケースから~

なぜなら、当時のアメリカ医学界では、医師が医療における発明を特許にする事は倫理に反しているという考えが一般的であり、特許取得により利益を得る事はあってはならない事と考えられていたからです。

と言うのも、モートンが特許を取得する50年ほど前に、医師のエドワード・ジェンナーという人が天然痘のワクチンを開発したが、特許を取得してしまうと予防接種を受けるのが困難になり、多くの人々にワクチンが行き渡らなくなると考え、敢えて特許を取得しなかったという「行動」を取っていました。

 

これにより、医学界では「医療特許」は取得すべきではない、というのが暗黙の了解になっていましたが、モートンの特許取得により、様々な「賛否」の論争が繰り広げられていきます。
しかし、モートンは批判の声に目を向け、耳を傾ける事なく、エーテルにオレンジ香料を混ぜた「リーセオン」という新たな麻酔薬などを更に売り出していきます。

なぜなら、この半年前にアメリカ・メキシコ戦争が勃発し、モートンは多数の負傷者が出る戦地は「大きな市場」になると考えていたからです、、、

 

ところが、モートンの特許を認可した張本人であるアメリカ「政府」は、この特許を無視し、エーテルを無断で戦地の負傷者の治療に活用していきました。
このような「政府の行動」は、次第に病院や個人医師、そして、全米の医学界にまで広がっていき、モートンの特許は崩壊の一途を辿り、残されたのは大量の麻酔薬の「在庫」だけでした、、、

 

一方のウェルズは、以前から無償で亜酸化窒素の使い方などを教えていた事などにより、少数ながらも支持者を得て、自らの救いの道を探していましたが、当時の医学の先進地であるフランスにおいては、吸入麻酔法の発明者はウェルズであると知られるようになっており、パリなどを訪れては自分への称賛の声を励みにしながら、新たな麻酔薬の開発に邁進していました。
それが、

 

クロロホルム

 

です。
しかし、この開発の際にも、ウェルズは自らを人体実験の対象とし、しかも、このクロロホルムには依存性がある事により、次第にクロロホルム中毒に陥っていきました。
そして、中毒による精神錯乱の症状で事件を起こし逮捕され、有罪確定の次の夜に、獄中で隠し持っていたクロロホルムで自らに麻酔をかけ、足の大動脈を切って自死した事により、その生涯の幕を閉じました、、、

 

また、もう一方のモートンは「政府」に対し、特許料の代わりに報奨金を支払うよう要求し、何度も却下されては、再度訴えるという事をしている内に、1860年に特許が期限切れを迎える事となってしまいました。

更に1862年には、ニューヨークの巡回裁判所が、モートンの特許は、そもそもの14年前に認められたその時に遡って「無効」であったとの判決を下し、その後もモートンは麻酔法による特許でお金を得る事もなく、その生涯の幕を閉じていきました、、、

 

そして、麻酔法の発見は医療が「ビジネス化」していく始まりとなり、医療研究が人助け以上に、より「利益を目的」に行われるようになった、、、との見解も存在するとの事です、、、

 

そして、現在の医療特許は巨大ビジネス市場となっており、特にアメリカでは、これが医療費の高騰に繋がり、「医薬品」が高額になっている事で患者さんが薬代を払えない(故に治療も受けられない)状況にもなり、更に、この傾向は「医療機器」でも同様であるが、その一方で、企業が開発費を回収出来なければ、新たな医療も生まれていかない、、、という現実も存在している、、、と、この番組では締め括られておりました。

 

また、現在では「医薬品」と「医療機器」の特許は広く認められる事となっているが、「医療法(治療の方法や手術の方法など)」は、それぞれの国でまちまちになっており、「医療法」に特許を認めているのは「アメリカ・オーストラリアなど」、認めていないのは「日本・イギリス・フランスなど」との情報も結びとして紹介されていました、、、

この番組からの紹介はここで終了ですが、繰り返しですが、今回は特に、良い悪い、正しい間違いなどの「二者択一の判断」に、あまり陥らないように心掛けてみて下さい。

 

では、ここでホッと一息ブレイクタイム!との、私の「思い」からと、麻酔に関してはこのTOPICSでも取り上げる機会もそうそうは無い事から、余談や雑談としての、私自身の体験談を少しお伝えして参りますので、頭の切り替え?にでも活用してみて下さい(笑)