「動機」を捉えるとは・・・ ~麻酔という医療特許と精神医療の身体拘束のケースから~

さて、当時の外科的治療(手術や抜歯など)では、痛みという大変な苦しみが伴っていた為に、お酒やアヘンで感覚を麻痺させたり、体から血を抜く事で失神させたり、時には、痛みへの怖れから自死する人もいた状況です。

そのような中、ウェルズは当時の見世物として流行していた「笑気ガス 吸入効果の大実演会」を見て、ヒントを見出していきます。
ちなみに、この笑気ガスとは「亜酸化窒素」の事で、現在の歯医者さんや病院などでも、患者さんの検査や治療の際に、気持ちを落ち着かせる事を目的として導入している所もあります。

 

そして、この実演会というのは、笑気ガスを吸った人々が、ハイな気分になったり、失神したりする様子を見て面白がるような「代物(しろもの)」でしたが、ウェルズは、このショーに参加していた人々が血を出したり怪我をしているにも関わらず、痛みを感じていない様子を見て驚きを受けました。

そこから、この亜酸化窒素を使えば抜歯時の痛みが消えるのでは?と考え、自らへの人体実験を含めた、様々な実験に取りかかっていきました。
そのように実験を繰り返していき、実際に何十人にも笑気ガスによる抜歯を行っていた所、痛みを訴える人がいなかった為、ウェルズはこの方法を地元の歯科医にも教えていく事になりました。

この時のウェルズに対しては、このような方法を「自分だけ」のものにするのでもなく、患者さんに「より良いサービスを提供」する為に、様々な発明をする人と好意的に捉えられていました。

 

そして、1845年にウェルズは弟子のモートンと共に、医師やハーバード大学の医学生の目の前で、無痛公開抜歯手術を企画します。
勿論、当時は医師の間においても、無痛手術は成し遂げられていませんでした。
そのように、医師等からの嘲気笑いが起こる中で手術は行われていきましたが、亜酸化窒素の投与量がわずかに足りなかった為に、このデモンストレーションは失敗に終わり、この事により、ウェルズは歯科医を辞め、失意の淵を何ケ月も彷徨うことになります、、、

 

それから半年が過ぎ、モートンがウェルズの元を訪れてきました。
色々な話をしている中で、実は、モートンが訪れた理由は、ウェルズの吸入麻酔法が莫大なお金を生み出す事に気づいており、この方法をウェルズから盗み取る事が目的でした。

 

実は・・・モートンは若い頃・・・詐欺師(ペテン師)をしていたのです・・・

 

このようにモートンの「真意」を見抜けぬままに、ウェルズは丁寧にその方法を伝授していきました。
そして、方法を授けられたモートンは、吸入麻酔法を自分の発明にしようと考え、そこで目を付けたのが、亜酸化窒素ではなく、

 

ジエチルエーテル

 

という揮発性の液体の薬品でした。
これまでも、このエーテルを吸うと吐き気や呼吸困難が治まることは知られていましたが、1846年に、モートンは自らの発明品と銘打って、公開手術を企てていきます、、、