心に副作用はあるの・・・? ~モンスター・スタディーと呼ばれる吃音(きつおん)実験から~

先日、「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」(NHK)という番組が放映されておりました。
そして、この番組において、1939年にアメリカの孤児院で行われた「心理学上の人体実験」が紹介されていました。
その人体実験の目的とは、

 

言葉により子ども達を精神的に追いつめ・・・吃音(きつおん)に出来るか?

 

という内容です。
ちなみに、「吃音」とは、発音の際、第一音が容易に出ない、繰り返す、引き伸ばすなど、円滑に話せない状態とされており、「どもり」とも言われている症状です。
では、この番組で紹介されていたあらすじを元にしてご紹介していきますが、これは現実に行われていた実話です・・・

 

この実験を主導したのは、言語心理学者「ウェンデル・ジョンソン」という人で、彼は後に「吃音治療の父」と呼ばれる「権威」にもなった人です。
このジョンソンは、小学生の時に担任の教師から「あなたは吃音である」と指摘され、その後は吃音がひどくなっていったと回顧しており、吃音が治りきらないままも、大学に進み同じく言語心理学者の「リー・トラヴィス」の元で学んでいました。

この師とも言えるトラヴィスは、「吃音を来すのは、「脳」に何らかの原因がある」と考え、ジョンソンは自らが治療の為の様々な実験台となっていきました。
しかし、ジョンソンの吃音は治る事はなく進んでいったため、ジョンソンは吃音になる「別の原因」を探っていきますが、その手始めとして、彼は1934年に吃音の調査を開始しました。
そして、その調査結果から、子どもの吃音を親がその都度指摘し、それから子どもの吃音がよりひどくなっていった、との結論に達しました。
そして、1938年にその結論を学会に発表しましたが、それが、

 

診断起因説

 

と呼ばれているものです。
この説は、ジョンソンの幼少期の体験とその後の調査において、「吃音を生み出すのは、吃音であるとの診断を下すからである」という内容ですが、当時の学会では「脳」に原因があるとの説が主流であり、この診断起因説には目も向けられる事はありませんでした。
ちなみに、現在においても、この診断起因説は吃音の原因としては否定されているとの事です。

このような背景の元、ジョンソンは自らの学説の正しさを証明しようとの思い(固執)から、人体実験へと突き進んで行きます・・・
そして、この実験を遂行するに当たり、「メアリー・テューダー」という女子学生を招き、

 

吃音だと意識させる事で、子どもを吃音にする事が出来たら、私の説が正しいと証明出来る・・・

 

と、彼女に実験の目的を告げました。
そして、1939年1月17日に、テューダーが孤児院に派遣されて行きます・・・

その孤児院でまず行われた事は、孤児院で生活している5歳から15歳の子ども達が集められ、話し方の流暢さのテストと称して、本を読ませ、とぎれ・繰り返し・音節の引き伸ばしなどが、言語聴覚士によりチェックされていきました。
そして、このテストに集められた子ども達には、「スピーチ セラピー」を行う、とだけ伝えられました・・・
そして、最終的に22人の子ども達が実験の対象として選別され、その選別された22人の子ども達は、その後、4つに分類をされました。
その分類が、

 

A:吃音はあるが、気にしなくても良いという「ポジティブ評価」
B:吃音があるので、問題があるという「ネガティブ評価」
C:吃音ではないにも関わらず、吃音である、あるいは、吃音になりかけているという「ネガティブ評価」
D:吃音ではないので、問題はないという「ポジティブ評価」

 

というものです。
そして、この実験の「真の目的」はジョンソンの説の正しさを証明する為だけのものですので、この実験の「真の対象者」は「Cの分類の子ども達」に絞られ、その後、5ケ月に渡る人体実験が行われていきます・・・

ここまで、少し読み疲れをされている方もいらっしゃるかもしれませんので、リラックスしたり、休みながらで構いませんし、頭を整理しながらでも続きをお読み下さい(笑)
では進めて参ります!