死に逃げは出来ない:前半 ~気候変動とマイクロプラスチックより~

ところで、気候変動の影響が大きい地域の一つである南アフリカのカラハリ砂漠では更に乾燥が続いていくと予想されていますが、この地では約30年前からミーアキャットという動物の追跡調査が行われていますが、この15年間は特にこの地での気温が高くなり、ミーアキャットの赤ちゃんの平均体重が減少傾向にある事が分かりました。
《 この原因 》として、暑さによる獲物の狩りの減少による《 餌不足 》も考えられましたが、《 実際には 》餌の量は変わっておらず、暑さによって餌に含まれる《 水分量 》が減少している事が有力視されています。

そして、このような影響は、遺伝的な適応という側面からも、より大型の動物では大きくなっていきます、、、

 

一方、先程のビッグホーン盆地ではPETM時代の植物の堆積物の調査も行われています。
その結果、PETM以前は様々な木々が密生していた事が分かりましたが、その後の気温上昇により乾燥に強い種の木々へ《 生態系が置き換わっていった 》事も分かりました。
つまり、PETM当時では地球規模で植物の《 生息分布 》が1、000㎞以上も移動し大きく変化したという事が判明しました。

そして、このビッグホーン盆地ではPETM以前に生息していた植物の化石も見つかりますが、生き残れなかった植物もあれば、適応して生き残った熱帯特有の植物もありました、、、

 

その中で、葉っぱに小さな穴が幾つも空いている化石が見つかります。
それは虫に食べられた痕跡でしたが、他の時代よりも穴が多すぎるとの事で、更に詳細な研究が行われましたが、PETMの頃には虫食いの穴が際立って多くなっている事が判明して来ます。

《 その原因 》の一つの仮説として、二酸化炭素の濃度が高まると植物に含まれる栄養素が減少し、特に窒素(チッソ)の量が減ってしまいますが、この窒素は動物にとって体内の酵素やタンパク質やDNAを作るのに《 欠かせない要素 》となっています。
つまり、葉の中の窒素(量)が減少すると、昆虫などは生き残る為により多くの葉を食べる必要性が生じて来ます。
いわゆる食害と言われる現象が発生していたという事になります。

そして、《 現在の人間が引き起こしている 》二酸化炭素の増加のペース(加速度)はPETM時代の10倍から100倍にまで及んでいるそうです、、、

 

そして、現在の地球は記録的な速さで温暖化が進行しており、二酸化炭素の排出を大幅に削減出来なければ(西暦)2、100年頃の平均気温は3℃以上も上昇するとの試算も出されています。

そして、その大きな影響を受けるのは農作物に留まらず、《 生態系の調和とバランス 》が大きく崩されるであろうと考えられています、、、

 

その一例として、ドイツのハルツ山地という所では害虫の増加により森林を広範囲に伐採《 せざるを得ない 》状況になっています。
これは、気温が上がっている事で暑さを好む昆虫などが大量発生していると同時に、雨が少なくなり森林が弱っているという現象です。
そして、2018年に撮影された森林の衛星画像と、2021年に撮影された同じ場所の画像を比べてみると、森林全体の3分の1が枯れてしまっている事が分かりました。

このような森林というのは、南極以外の全ての大陸で生育しており、地球の陸地の約3分の1を占めています。
一方で温暖化による乾燥により森林火災は激増しているのが現状です。
そして、大気中の二酸化炭素を減少させていく為には《 健全な森林が欠かせない 》ものとなります。

 

と言うのも、木は成長の為に二酸化炭素を吸収し、葉の中で二酸化炭素から糖分を作り栄養にし、それと同時に《 私達が生きていく上で欠かせない 》酸素も作り出します。
そして、木に吸収された二酸化炭素は葉や枝や幹や根に蓄えられ、その二酸化炭素は(従来の自然な環境が保たれていれば)木が《 生涯を終えるまで 》大気中に放出される事はありません。

そして、《 理論上は 》高濃度の二酸化炭素を吸収すればするほど木の成長が加速し大きくなり、より多くの二酸化炭素を吸収してくれると考えられていましたが実験をしてみた所、確かに光合成の活動が活発になり二酸化炭素の吸収量は多くなったものの、《 実際には 》木が大きく成長する事はありませんでした。

 

この実験から木の上の方の葉は成長していましたが、幹は太くならず、余分な二酸化炭素は成長の為には使われておらず、《 逆に 》根から放出されている事も分かりました。
つまり、これまでは木々が大気中の二酸化炭素を吸収してくれて生態系のバランスが保たれて来ましたが、大気中の二酸化炭素が増え《 過ぎれば 》木々も吸収し切れずに生態系のバランスが崩れていく事を意味しています、、、