そこで、皆さんは、このマグサイサイ賞というものをご存じでしょうか???
私も最近まで知りませんでした(笑)
これは、アジアのノーベル賞とも呼ばれているもので、1958年から始まったものです。
このルーツはフィリピンの第7代目の大統領であったラモン・マグサイサイ氏(1907年~1957年)が清廉な政治活動を行っていた事により、そのような精神を受け継ごうという思いから創設された賞です。
過去にはマザー・テレサ氏や、難民保護に力を入れた国連難民高等弁務官の職もされていた緒方貞子 氏なども受賞しており、この賞の候補者に推挙される方々につきましても、「実際の行動や足跡」などを緻密かつ厳密に調査が行われた上で授けられているものです。
そして、昨年の2021年においても幾人かの方々が受賞されましたが、その中にインドネシアでドキュメンタリー(映画)を製作し、国家や企業等の不正を暴き、様々な圧力や、時には直接的また間接的な脅迫などを受けながらも、苦しむ人々の声を伝えている《 Watch Doc 》という団体にも贈られました。
そして、その団体の代表であるダンディ・ラクソノ氏が昨年の12月25日に放映されたETV特集(Eテレ)『 草の根から世界を変える ~マグサイサイ賞受賞者と民主主義~ 』においてインタビューを受けていました。
そこで、そのインタビューのほんの一部をご紹介致しますが、政治や民主主義という観点からではなく(勿論、これらも大切ですが)、今回のテーマの趣旨の元に眺めてみて下さい、、、
インタビュアー:
『 全ての人の立場を伝えようとするのではなく、(Watch Docが製作するドキュメンタリーは)特定の立場に立つのですね? 』
ダンディ・ラクソノ氏:
『 私達の映画は明らかに特定の立場に立って作っています。
声なき者に発言機会を与えることで、公共の議論の均衡を図らなければならないのです。
ジャーナリズムでは「双方を均等に取材すべき」と言われますが、甘いと思います。
なぜなら、大企業は多額の予算を使って広告を発信できます。
(インドネシア)政府は自分の放送局がありますから、記者を呼んでいつでも情報発信できます。
民間企業ですらジャーナリストを飼い慣らしています。
しかし、農家はどうでしょう?
漁師は?
一般の市民はどうでしょうか?
彼らにはメディアの人達を集めることも、カメラマンに来てもらうことも出来ません。
広告会社に費用を払って宣伝することも出来ないでしょう。
双方を均等に取材していたら、いつまでも不均衡な状況が続くことになります。
公平なバランスとはならないのです。 』
そして、この団体が目指しているのは《 ノントン・バラン(一緒に観る) 》というもので、これはネット環境なども人それぞれ不揃いであるが故に、上映会を行って誰でも(ドキュメンタリー映画を)観れる環境を自らで作り、一緒に議論できる機会を設けていく事だそうです。
インタビュアー:
『 あなたのドキュメンタリーをきっかけに、何百万人もの視聴者達が対話を始めています。
でも、“ ノントン・バラン(ノバー) ”と呼ばれる集会こそが、最も重要だと考えているそうですね。 』
ダンディ・ラクソノ氏:
『 はい、デジタル時代においては多くの人と繋がっていると錯覚しがちです。
でも、実際には繋がっていなくて、(SNS等の)道具を介して交流しているだけということがあります。
パブリック・スクリーニング(上映会)「ノバー」では、実際に人が集まります。
彼らは直接会って、お互いの顔を至近距離で見ます。
そして、映画について議論する中で、物理的・心理的な繋がりが生まれます。
そこには議論する為の材料があります。
映画を通じて自分達の地域にもある、似た課題を見つけます。
共通の課題を見つけることで、問題を解決しようとするエネルギーが生まれます。
映画で観た別の地域の事例がヒントとなり、自分達の処方箋を探していくのです。 』
では、ここからは締め括りに入らせて頂きますが、憑依とウイルス(感染症)という「反映」の視点、そして、ダンディ・ラクソノ氏のコメントから、