前半:メンタル(心)を整えるには現実的手段の活用も ~無戸籍(者)と私の行政書士体験から~

では、次は市川さんと出逢う迄の30年間を無戸籍者として生きてきた、男性Aさん(31歳)です。
このAさんの父親のお話によると、31年前に母親が生まれたばかりの赤ちゃん(Aさん)を連れて帰って来たので、誰の子なのか?と何度も聞いたそうですが母親は真実を語らなかったそうです。

そして、出生届が出されないままに、家の中で人目を忍んで隠れるように育てられてきました。
義務教育を受けた事もなく、健康保険証もないので病気になった時にも医師に診て貰った事もなかったそうです。

また、Aさんは母親に、自分は小学校に行けないの?と聞いたりもしましたが、今、問い合わせしているから、などの理由ではぐらかされ続けてきたとの事でした。
このように、周りの人達が小学校に行っている時間の間に、一人で公園でブランコに乗って遊んだりもしていたそうですが、

Aさん:
『 ただ単に時間が早く経たないかなっていうくらい、、、 』

 

との思いだけで過ごしていらっしゃったそうです。
そして、2019年にAさんの母親が病気になり意思疎通が困難になった事から、Aさんと市川さんに繋がりが生まれました、、、

そこで市川さんは、まずはAさんの戸籍を作らなきゃと考え、幾度も法務局や市役所を訪れましたが、すると《 前例が無い 》とたらい回しにされ続けましたが、ある点に着目してAさん単独の戸籍を作る事を裁判所に訴え出て、僅かに残っていた幼い頃のAさんの写真などを提出し、2021年に父母の欄は空白のままで、Aさんの戸籍が作られる事になりました。

このように、無戸籍である(との思い込みも含め)事から、Aさんは学校教育を受けられなかった面もあり、名前と住所以外の漢字を書けず、計算も小学校低学年用の教材を買ってきて独学で学んでいる最中との事ですが、戸籍が出来たら仕事をしたいとの思いも以前から抱いており、現在はその為に集団(生活)に慣れる所から始めようとの方向で清掃のボランティア等に参加されているそうです。

 

では、ここらで小休止致しましょう(笑)
前回・前々回で取り上げましたトランスジェンダー等におきましても「少数派」などのキーワードも出て参りましが、もしかしたら無戸籍者というのは、それよりも「少数派」であるのかもしれません。

が、しかし、これも前回・前々回では「ふつうの人」とのキーワードも出ておりましたが、トランスジェンダー等の方々におかれましても、今回の無戸籍者の方々におかれましても、「(人)数」という問題ではありません

更に、今回のテーマに限らず、「当人(当事者)」においては「確率(論)」や「統計」などを持ち出されても、何の意味も成さない(救われない)というケースも多々存在しております。
やはり、、、「私」そして「あなた」と同じ「人間(という問題)」です、、、
では、先に進めて参りましょう!

 

市川さんが地元の夏祭りに参加していた時に、ある一人の女性と出逢いました。
その女性の方は、日本で生まれて育ちましたが、母国がタイで日本に戸籍が無く、現在同棲中のパートナーの方と結婚したいのだけれども、これも無戸籍である事から結婚出来ずに困っておりました。

この女性の方は、日本人の父親とタイ人の母親の元に生まれました。
しかし、両親が内縁関係であった事などから、戸籍が作られずにいました。
それでも周りの人々の協力などによって、タイ国籍として(日本で)住民票を作る事が出来、高校も卒業して現在は働いていらっしゃいます。

しかし、結婚という事に関しては無戸籍である事が大きな壁となって立ち塞がり、結婚の意思は双方共に揺るぎない確かなものであるにも関わらず、このような困難な?結婚を巡って彼との間で何度も口論になったりしていました。

そして、市役所に結婚の相談に出向いた所、《 前例が無いから 》と言われて先に進めない状態になっていました、、、

そこで、2021年7月、この女性とパートナーの男性と、そして市川さんの三人で以前に追い返された市役所に出向いていきます、、、

 

そして、この際にもタイ国籍なのでタイから取り寄せる添付書類や、タイにおける居住証明書などが必要になり、また、その書類等の日本語訳も付けて欲しいなどの説明を市役所から受けましたが、その時の市川さんと市役所の担当者の方とのやり取り!?バトル!?が始まりますが、もしかしたら、ここが私が今回一番お伝えしたいクライマックス!?の場面であるかもしれません(笑)

と、笑い話ではありませんし、それで済ませられない大切な問題ですので、その場面を一緒に見て参りましょう!