シンプルと複雑は両雄並び立つ ~ナホトカ号事故とモンブラントンネルから~

【 経験則から導き出されたシンプル 】

事態を収束させる為に、海上保安庁から緊急出動要請を受けたのが、当時の海上災害防止センターの部長の佐々木邦昭 氏でした。

佐々木 氏は数多くの重油流出事故の災害現場で指揮を執った、「経験豊富」なスペシャリストでした。

 

佐々木 氏:
『 日本でまだ起きてない、初めて経験する、とんでもない事故になる。 私なりにピンと来た。 』

 

そして、佐々木 氏が考え付いたのが、

 

早期に機械力をシステム化して回収する

 

という方策でした。

 

 

少し時を遡った1991年に湾岸戦争が勃発し、油田から大量の原油が流出して、海が真っ黒に染まりました。

その際、佐々木 氏は国際緊急援助隊として、サウジアラビアに派遣されました。

そして、現地で活動している時、思いも寄らない「現実」を目の当たりにしました、、、

 

佐々木 氏:
『 目を見張ったのはドイツチーム。 かなり高度な油回収装置を使っていた。 だけど、ドイツチームの使っていた機械は、ゴミ捨て場に捨ててあった。 使いこなす人がいない。 』

 

この現実を垣間見た佐々木 氏は、

 

回収装置はシンプルで丈夫なもので・・・

かつ、高校卒業生(程度の力)でも扱えるものが必要!!!

 

と思い至りました!

 

 

【 逆転の発想 】

そこで、佐々木 氏はコンクリートポンプ車の活用を考えました。

コンクリートポンプ車の普段の使い方は、コンクリートを「吐き出す」ものです。

 

しかし、

 

ポンプの回転を逆転させると、吸引力が働いて・・・

重油の強力な回収装置になる!!!

 

という事です!

つまり、吐き出す力を「吸い込む力」に変えただけでした(笑)

 

 

更に、土砂でもヘドロでも吸引可能な、強力吸引車をコンクリートポンプ車の後ろに連結させました。

強力吸引車の普段の使い方も、側溝の掃除や汚泥物の撤去です。

 

つまり、「どちらの」車両も、

 

使いこなせる人がたくさんいて・・・

普段使いという、日常に溢れている機械!!!

 

でした!

平たく言えば、「ごくありふれた」建設車両という事です(笑)

 

 

【 人海戦術と機械の両方の実践 】

しかし、時間との勝負である状況に変わりはありません。

そこで、吸い上げた重油を貯蔵する為のピット(油貯蔵プール)を、一晩で作り上げました。

更に、車両が浜辺に入れる為の道路も、一晩で作り上げました。

 

こうして、1月9日から回収作業に取り掛かった所、作業開始の3日目当たりから、状況はみるみる内に改善に向かいました。

そして、作業開始の4日目からは石川・新潟・鳥取など、他の重油の流出先でも回収が始まりました。

 

しかし、波打ちブロックや岩場にこびりついた重油は、機械では回収する事が出来ません。

故に、全国からボランティアなどが集まり、多くの人の協力で「地道に丁寧な」回収作業も同時に進められました。

 

つまり、

 

人海戦術と機械の「両方を実践」した事で・・・

「為せば成る」という奇跡が実現した!!!

 

と言えます(笑)

 

 

では、ナホトカ号事故は終了し、視点を変化させます!

 

例えば、「人生」は山登りに例えられる事もあります。

これは、

 

頂上に至る道は無数にある

 

などで使われる事が多いでしょう。

また、中にはヘリコプターで頂上に向かう人もいるかもしれませんが、それも自由です(笑)

 

そして、同じく山に関しては、

 

立ち塞がるなどの「シンボル・象徴」

 

として例えられる事もあります。

そして、山の立ち塞がりを「解消」する為には、

 

トンネルを掘る

 

という事も有効な一つの方法です、、、

 

 

では、番組『 地球ドラマチック 』(Eテレ)から、「 モンブランに挑む! ~ヨーロッパアルプス最高峰との闘い~ 」の回を少し眺めます!