【 メタファー (物語) 】
昔ある国に、とても上手に陶器を焼く名人がいました。
名人は花瓶や皿や茶碗など、数多くの銘品を作りました。
故に、この国を訪れた旅人は皆、名人の陶器を土産に買い、故郷に帰って行きました。
ある日のこと、殿様の家来の役人が、名人の店を訪れました。
すると、手にした茶碗がとても軽く、しかも、手際よく薄手に出来ていたので、殿様が使う茶碗を依頼しました。
役人は名人に『 殿様が使う茶碗なので、念には念を入れて作るように。 』と告げ、城に戻って行きました。
依頼を受けた名人も、『 殿様は軽く薄手の茶碗を所望している。 』との役人の言葉があったので、大変名誉に思い、一層の精進をして茶碗を作りました。

数日後、役人が茶碗を受け取りに来たので、『 とても軽くて薄手の素晴らしい茶碗が出来ました。 』と話し、役人に渡しました。
受け取った役人は、早足で城に戻り、さっそく殿様に『 名人が殿様だけの為に、念入りに作った茶碗です。 』と話し、殿様に献上しました。
受け取った殿様も、持っているのか持っていないのか分からないほど、軽くて薄手の茶碗だったので、役人に『 茶碗の善し悪しはどうやって決まるのだ? 』と尋ねました。
役人は『 全ての陶器というものは、軽くて薄手が素晴らしく、重くて厚手のものは、たいそう品の無いものと評価されています。 』と答えました。
殿様は黙って頷(うなず)き、それから食事の時は、その茶碗を使う事にしました。
ところが、茶碗で食事をしてみた所、毎回、手が焼けるような熱さを我慢して、食べなければならなくなりました、、、

殿様は家来を信用しているので、こんなに手が熱くなり、辛い思いをしながら食べる茶碗に疑問を抱きつつも、『 いや、家来は苦痛を忘れてはならない事を、忠義の心から教えてくれているのだろう。 』と考えてみたり、また、『 いや、家来は一番強い殿様だと思っているから、茶碗の熱さは問題にならないだろう。 』と思ったりしました。
しかし、体は正直で、毎度の食事時になると、殿様の顔色は自分でも気づかぬうちに曇っていました、、、

ある日のこと、殿様が山に狩りに出掛けた所、夜も遅くなったので、近くの百姓の家に泊まる事にしました。
百姓は殿様が泊まるとの事で、喜んで貰えるもてなしをしたいと考えるものの、ご馳走は作れないので、せめて体が温かくなるようにと、山の幸の鍋を殿様に差し上げました。
しかし、この時、殿様は手が熱くならない事に気づきました、、、
そこで、百姓に『 この茶碗は名人が作ったものか? 』と尋ねました。
すると、百姓は『 貧乏なもので、誰が作ったか分からない、安物の茶碗です。 なので形も悪く、ただ粘土を焼いたように、厚くてやぼったいものです。 』と、大層恐縮して話しました、、、

翌日、殿様は城に戻り、食事時になると、今まで通り名人の茶碗が出て来ました。
やはり、殿様の顔色は曇ったままでした、、、
数日後、殿様は茶碗を作った名人を城に招きました。
そして、名人に向かって、次の通り話しました、、、
『 そなたが茶碗を作ってくれた事は感謝する。 しかし、茶碗とは熱い茶や汁を入れるものである。 だから、それを使う者が安心して食べる事が出来るものでなくてはならない。 いくら名人が焼いた茶碗であろうが、世間の評価が茶碗は薄いものほど高価で素晴らしいとされていようが、使う者の事を考えて作る親切心がないと、何の役にも立たない。 私はそなたの作った茶碗で、毎日苦しい思いをしておるのだ。 』
その後、名人は要望に応じて、厚手の茶碗も作るようになりました、、、

では、メタファー(物語)は終了です!