第94回:『 便利と怠惰・・・そして、本当の優しさ ~自らで出来る自由を奪われない為に~ 』
【 その他参照ワード:ネグレクト、介護、バリアフリー、自動制御ブレーキ 】
S.Light.M(カウンセリング・ヒプノセラピー・レイキヒーリング・各種セミナー&認定講座)の瀬川です!
近頃はTVコマーシャルでも自動制御ブレーキが搭載されている車が「標準」になりつつあります。
過去の痛ましい事故から、二度と同じことが起こらないために色々開発されていることでしょう。
「便利」になることは、その反面として「怠惰」になることも隠れています。
車の自動制御ブレーキも、いざという時の安心感・安全感を感じられる反面、危険を未然に防ぐ意識が徐々に薄れていく側面もあります。
勿論、「今の所」は機械に頼らず、充分注意して安全運転を心掛けている人が大半でしょうが、、、
ところで、昨年の第153回芥川賞を受賞した『 スクラップ・アンド・ビルド 』(文藝春秋)という小説があります。
作者は羽田圭介 氏ですが、最近はバラエティ番組にも出演しているので、知っている人もいるかもしれません(笑)
【 究極の便利さの功罪 】
小説の内容は「早くお迎えが来て欲しい」が口癖の祖父に対し、主人公である孫が究極の孫孝行!?をしようと葛藤する物語です。
ただ、その孫孝行の行動とは、
本人(祖父)が自分で出来ることまで過剰に全てやってあげて、本人(祖父)の行動を奪っていく
というものです。
「バリアフリー」ではなく、
行動を奪うためにバリアーを逆に作り上げ、要介護度をさらに重度に押し進める逆行的な介護を試みる
というものです。
つまり、孫の行動の全てが、
本人(祖父)にとっては究極的に「便利」になる
ということを意味し、その反面、
本人(祖父)の「自由」を徹底的に奪い取り「怠惰」にさせる
という動機・目的が隠されています。
そして、自分では何も出来なくなることで本人(祖父)の死期を早め、究極の自発的尊厳死(※ 小説内の表現です)を目指すというものです。
ちなみに、最近はニュースでも尊厳死と安楽死を混同して報道しているケースもあります。
ニュースだからと言って「鵜呑み」にせず、両者は「違うもの」であることを心に留め置いて情報に接して下さい!
【 相反する現象が生じやすくなる 】
「便利」になると、効率性や安全性が増す側面も確かにあります。
そして、「便利」になるとは表現を換えれば、
意識を向けずとも物事が実現し、振り返ると、どうやって実現したかが分からなくなっている
という相反する現象が生じやすくなります。
私も「漢字」を忘れると、「以前」であれば辞書で調べていたことが、「今では」スマフォで字を変換して思い出す事も勿論あります(笑)
そして、辞書で調べていた時よりも、変換で思い出した「漢字」の方が、すぐ忘れる確率は高いです(笑)
【 無意識の実現の怖さ 】
そして、私は車の自動制御ブレーキを否定している訳ではありません!
ただ、赤信号を認識したら「自動的に」止まる、人を認識したら「自動的に」ブレーキがかかる、、、
このようなことが無意識に実現していくとしたら、「これから先」の車の運転はどうなっていくのでしょうか???
そして、小説の本人(祖父)はあらゆることを「自動的に」してもらい、自分で出来る自由が密かに奪われていく現実、、、
そして、それが本人(祖父)にとっては無意識で実現していく、、、