【 理性で考えれば気づけたにも関わらず 】
彼女はタンス預金を元手に、株取引を始めます。
そして、購入する株を選ぶ時には、店にあるガマガエルの石像に祈りを捧げて、お告げを得ていました。
そして、彼女が購入する株のほとんどが上昇した事で、評判を呼びます。
すると、彼女は趣味の占いで培った、確信めいた物言いで、著名人や財界人の人気を集めていきました。
こうして、「評判が評判」を呼び、彼女の元に金融マンが列をなすようになり、支店長クラスの幹部が集まる「縫いの会」が開催されるまでになりました。
こうして彼女は、チヤホヤされるようになります、、、
しかし、「理性」で振り返ると、
そもそもがバブル期なので・・・
ほとんどの株が上昇し続けていた・・・
というのが「カラクリ」です。
そこに、神のお告げという神秘めいた手法が加わり、彼女が株(銘柄)を予言すると、
その株を買う人が増え続け・・・
更に株が上昇し続ける・・・
という「流れ」でした。
そして、銀行も証券会社も、彼女との株取引だけで支店全部のノルマが達成出来る、超大口顧客となっていきます、、、
【 群衆心理に陥る金融業界 】
日本興業銀行(以下、興銀)は「産業金融の雄」と呼ばれていました。
大企業へ設備投資を促す融資が主たる業務でありながらも、個人顧客の開拓の必要性に迫られつつありました。
すると、興銀の担当者は彼女にワリコー(割引興業債券)を勧めます。
ちなみに、ワリコーとは「先に利息が割り引きされた債権」ですが、これが後に彼女を奈落の底に「引きずり込む」事になります。
そして、ワリコーを担保にした興銀から彼女への融資は、僅か1年数ヶ月の間で10億円、25億円、50億円、60億円と膨らみ続けます。
そして、最終的に貸し付けた総額は
2400億円
に上りました。
彼女は借入金で大量の株を買い漁り、個人株主でありながらも、有名大企業と肩を並べるまでになりました。
更に、ノンバンクと呼ばれる貸金業者も、彼女への融資を始めます。
そして、金融マンにとっては、
(自分の会社が)彼女と取引出来ない事が・・・
そもそものデメリット・・・
と「判断」し、他の会社も続々と貸し付けるようになります。
そして、彼女の金融資産は僅か3年足らずで、772億円から6182億円へ膨れ上がりました、、、
【 蜘蛛の子を散らすバブル崩壊 】
1989年12月28日、この日をピークに日経平均株価(38、915円)は急落します。
そして、半年後の1990年10月1日には、日経平均株価は半値に近い2万円を割りました。
故に、金融資産の価値もドンドン減少しました。
そして、彼女も「例外」に洩れず、支払いが借り入れを上回る債務超過に陥りました。
1990年末の彼女の資産総額は2650億円、借入金は8870億円 支払い総額8906億円となります。
しかも、金利支払いが627億円となり、これが意味するのは、
金利だけで、1日当たり1億7178万円の支払い
が必要という事です。
そして、彼女と取引していた銀行は14銀行15支店、ノンバンク48社63支店でした。
これが、日本の金融業界を揺るがす、大問題に発展する怖れを生じさせました、、、