【 敢えて厳しい問い掛けをする親の視点 】
主人公の山岡士郎と、栗田ゆう子の結婚に向けた準備が進んでいました。
しかし、父である海原雄山と山岡の不仲の修復は、一向に進んでいません。
そして、山岡とゆう子と、ゆう子の両親が夕食を共にした時の会話です、、、
《 ゆう子の母 》:
大事なことというのは山岡さん、あなたのお父様のことです。
あなたとお父様のことは、ゆう子から聞いています。
今度、結婚するにあたって、お父様のことはまったく無視するんですか?
《 山岡 》:
あの男のことを俺の父親呼ばわりするのは、やめてください。
あの男とは、法的にも、精神的にも、もはや父でも子でもありません。
《 ゆう子の母 》:
でも、それは正しいことですか?
《 山岡 》:
正しいも何も、俺にはそれしか選択の道はなかった・・・・・
《 ゆう子の母 》:
過ぎ去ったことを、あれは誰が悪かった、それは誰が悪かったと言い続けて、それがどんな実りを結びますか?
《 山岡 》:
いや、待って下さい。
《 ゆう子の母 》:
考えてごらんなさい。
結婚したら、子どもが生まれます。
その子どもに、あなたは自分が父親を憎んでいると教えるのですか?
あなたは、自分の憎しみを自分の子どもに伝えるのですか?
《 山岡 》:
う・・・・・
《 ゆう子の母 》:
ゆう子もあなたと結婚すると、あなたにつき合って、海原雄山 氏を憎まなければいけないのですか?
それは私たちも同じです。
私たちは誰とでも虚心につき合える心を、いつも保ちたいと思います。
しかし、海原雄山 氏とだけはそう出来ないように、あなたは仕向けるのです。
あなたは、自分の憎しみを周囲に広げ、周囲の人間を巻き込もうとしているのです。
それで、豊かな心の持ち主といえるでしょうか?
あなたが心を和らげたら、解決する部分がたくさんあるのではありませんか?
私は山岡さんに、この結婚をきっかけにあなたのお父様と仲直りする機会を探して頂きたいと思います。
憎しみの輪を、私たち家族、さらには、生まれてくる子どもにまで広げようというのなら、今度の結婚を私は許す気にはなれません。
《 ゆう子 》:
お母さん!
《 山岡 》:
おっしゃることは、正論ですよ。
でも、正論だけでは、人間は生きていけません。
俺と父親の仲は、俺が勝手に壊したわけでもなく、理由もなくあの男を憎んでいるわけでもない。
親と子の関係を考えたら、子どものほうから先に親を憎むはずがない。
親に裏切られ、さまざまなひどい仕打ちを受け、それで言わば自己防衛のひとつとして親を憎むようになるんです。
《 ゆう子の母 》:
それは子どもがまだ幼児の頃の話でしょう。
成長すれば互いに誤解もとけるのじゃありませんか?
《 山岡 》:
お義母さんは何もわかっていない。
そんなありふれた一般論や精神論で解決できるなら、俺自身苦しんだりしませんよ。
あの男と仲直りするなんて、とても出来ないことだ!
それが出来なければ許さないとおっしゃるのなら、結婚なんかしないで結構です!
こうして、山岡はその場を立ち去りました、、、