正論を武器にすると本末転倒に陥る ~人工妊娠中絶の分断から~

【 テキサス州の「SB8」とは 】

先の判決が覆る前の2021年9月、テキサス州では胎児の心拍が確認された以降の中絶を禁止する法律、通称「SB8」が連邦最高裁判所の「反対」を受ける事なく、施行されました。

そこで、テキサス州のオースティンでは、女性6人が「SB8」の差し止めを求め、テキサス州を提訴しました。

その、2023年7月の民事裁判で証言した女性達の骨子が、以下のものです、、、

 

○ 妊娠中期に羊水が漏れた所、医師から「流産は避けられないが、胎児の心拍が確認出来る場合は、テキサス州の法律で非合法なので、医療処置は出来ない」と言われ、赤ちゃんの心拍を聞くよう強制された。

 

○ 妊娠18週目で破水したが、医師から「子宮口が開いてないので、今は祈る事しか出来ない」と言われた。 敗血症の危険があったが、「重篤な状態」にならなければ診察も治療も受けられないので、夫婦共々、重篤化するのを願わざるを得なかった

 

○ 医師から「出産前、もしくは、出産直後に胎児は亡くなる」と言われるが、中絶が違法なので「選択肢」が無く、見放された気持ちになった。

 

○ 「合併症」を引き起こし、命が危険に晒された。

 

 

そして、「建前」では、テキサス州は母体に危険を及ぼす場合のみ、中絶を認めています。

しかし、婦人科医にとっては、中絶処置をすると「罪に問われる」可能性があり、更に、母体に危険を及ぼす概念も、医学上では「非常に曖昧」なままです。

 

仮に、違法と判断されると、最長99年の刑で、医師免許も剥奪されます。

更に、10万ドルの罰金も課されます。

 

そして、テキサス州の妊産婦の「死亡率」は、全米の中で最も高い傾向が出ていて、先進国でもアメリカの数字は「最悪」と言われています。

しかも、この数字は、更に悪化する「懸念も指摘」されています。

そして、「SB8」に反対を表明している婦人科医のダムラ・カーサンは、次のように話します、、、

 

カーサン:
『 (「SB8」は)脅しですね。 厳しい刑罰を科す事で、医師を黙らせている。 従わせるんです。 こんなの不当です。 患者の命を救う為に、医師は自らの危険を省みず、判断しろと言う事ですから。 医師だって守られるべきです。 命の危険に晒された患者は、私達が知るより多いでしょう。 ICUの患者の一定数は助かりません。 中絶出来なかった患者も同じです。 いずれ明らかになるでしょうが。 死人に口なしです。 』

 

 

そして、オースティンの民事裁判所は、原告の法律の差し止めの訴えに応じました。

しかし、テキサス州はプロ・ライフの「後押し」を受け控訴し、2024年5月31日、原告の訴えは棄却されました。

しかも、母体に危険を及ぼす判断基準に、「一切言及しない」ままでした。

 

【 噛み合わないままに 】

そして、この判決を「喜ばしく」思っている、先の事務局長のポイマンは、次のように話します、、、

 

ポイマン:
『 訴訟を起こした女性達は、妊娠の継続が難しかった上に、それぞれの掛かりつけ医によるケアと指導が、非常にお粗末であった為、母体までもが危険な状況に陥りました。 その話を聞いて、私はとても胸を痛めたと同時に、州の法律が如何に入念で緻密かと言う事が浮き彫りになったと感じました。 抑止力として機能してこそ、法律です。 この法律の目的は、中絶を未然に防ぐ事。 中絶の為に別の州へ行く女性がいる事にも、目を向けなければなりません。 その数は4千人にも昇ると言われています。 こんなにも女性を追い詰めている要因は、何なんでしょうか。 』

 

 

1990年以降、アメリカでは中絶処置をするクリニックの医師4人、スタッフ4人が殺害されています、、、

そして、違法であるが故に、闇で行われる杜撰な中絶処置により、全世界では「9分に1人」の割合で女性の命が失われていると、言われています、、、

そして、ここまで見て来て、患者と現場の医師の声と、ポイマンの主張とは、全く「噛み合って」いません、、、

 

ちなみに、個人的には、ポイマンの「思い・行動」と「言葉」の間に、「乖離」があると感じますが、この理由は、この先にコメントします!!!

 

では、締め括りです!!!