正論を武器にすると本末転倒に陥る ~人工妊娠中絶の分断から~

【 中絶反対派のプロ・ライフとは 】

「宗教色」がとても強い、中絶反対派の団体「プロ・ライフ」があります。

そして、プロ・ライフの影響力は、連邦最高裁判所まで及んでいます。

そして、プロ・ライフの構成団体の一つ、「テキサス・アライアンス・フォー・ライフ」の事務局長のジョー・ポイマンは、次のように話します、、、

 

ポイマン:
『 ここで、改めて伝えておきたい。 女性が宿している命は、彼女のものではありません。 胎児は、母親とは別人格の一人の人間です。 思いやりある社会の一員として、私達は身籠もった子どもの命を、母親の独断で奪う権利など、擁護出来ません。 』

 

そして、連邦最高裁判所は判例を覆したものの、「州法」に関しては、それぞれの州に委ねました。

その結果、現在は15の州で中絶の全面禁止、6つの州で厳しい規制が設けられました。

 

 

【 中絶擁護派のプロ・チョイスとは 】

このように、禁止や規制の厳しい州に住む妊婦が、やむを得ない中絶処置を受ける為には、中絶が認められている州に行かざるを得なくなりました。

費用も然り、その為の移動に掛かる体の負担も大きいものです。

そして、一方で中絶擁護派の団体「プロ・チョイス」もあります。

 

イリノイ州は、中絶が認められている約20の州の内の一つです。

イリノイ州のカーボンベイルにある、「アラモ・ウィメンズ・クリニック」は中絶を望む女性の「避難場所」になっています。

そして、判決が覆って以降、1日平均で約30人の診察があり、その9割以上が別の州に住む女性で、患者数が急増しています。

 

クリニックの院長は、女性のアンドレア・ガエーゴスです。

以前の彼女は、テキサス州とオクラホマ州で父と共にクリニックを開院していたものの、先の覆った判決が元で閉院を余儀なくされ、イリノイ州にクリニックを移設しました。

 

ガエーゴス:
『 ここに足を運べない患者の事を、私はいつも案じています。 自分の意に反して妊娠させられた人達が、身体的、精神的、社会的、経済的に、どのような状況に陥ってしまうのか、心配です。 』

 

 

故に、クリニックでは中絶費用の資金援助をする団体と「連携」しています。

そして、クリニックでボランティア活動をしている、女性のジョーディス・ミルズがいます。

ミルズは、次のように話します、、、

 

ミルズ:
『 (プロ・ライフの)好き勝手にはさせない。 (中絶は)女性の権利に関わる事ですから。 自分の体の事は自分で決めるべきです。 他人がとやかく言う事ではありません。 皆、それぞれ異なった事情を抱えて、ここに来ます。 そうだ、中絶しようと急に思い立つ訳ではありません。 そんな単純な事ではないんです。 一部の人が考えているような状況とは全く異なり、彼女達は苦渋の選択をしたんです。 身を切る思いをして。 私は、どうしたら良いか、彼女達に言う立場にはありません。 そんな事は誰もするべきじゃない。 出来るのは、決断をする為に必要な情報を提供する事だけ。 クリニックの役割は、中絶を勧める事ではありません。 中絶するにしても、出産するにしても、本人の決断を尊重します。 』

 

そして、ミルズにも2人の娘がいて、2度の中絶を「経験」しています。

 

 

【 擁護派に掛かる圧力 】

コロラド州では中絶が認められていますが、プロ・ライフの活動家が絶えず「動員」されている州の一つです。

活動家は、中絶を支援をするNPOの施設の前で、女性の「罪悪感」に訴える抗議活動をしています。

そして、プロ・ライフは子育ての費用を負担すると主張しますが、それも定かではなく、「報酬」を貰って活動する人もいます。

 

そして、婦人科医のウォーレン・ハーンのクリニックは、プロ・ライフの「標的」になっているので、防弾ガラスなどの厳重な警備を敷いています。

実際に「過去」には、オペレーション・レスキューと称する運動の首謀者から、5発の銃弾が撃ち込まれました。

それ以降、ハーンはライフルを側において寝ています。

そして、現在のプロ・ライフの抗議活動に関し、ハーンは次のように話します、、、

 

ハーン:
『 アメリカにおける人工妊娠中絶の反対運動は、過激なカトリック信者や、白人至上主義者などによる、ある種のファシズムです。 議論を交わす訳でもなく、内戦を起こしている。 しかも、一方だけが使っているんだ、銃弾をね。 』