『 これは、ギリシャにまだ神々がすんでいたころのお話です。
そのころ、地上にはからだの大きな巨人族がすんでいました。
その巨人族の中に、プロメテウスとエピメテウスという兄弟がいました。
二人の仕事は、人間や動物たちにいろいろな力をあげること。
たとえば、鳥には空を飛ぶための翼を、貝には自分のからだをかくす殻を、また動物たちにはするどい爪や牙、すばしこさなどをあげました。
ところがたいへん!
二人は気前よく、いろいろなものをみんなに与えたので、人間にあげる贈り物がなくなってしまったのです。
そのころの人間は、火を知りませんでした。
ですから夜は暗闇におびえ、寒さにぶるぶるとふるえていました。
そこでプロメテウスは、人間に火をあげようと思いました。
火をもっているのは、太陽の神様ヘリオスです。
ヘリオスは、四頭の馬がひく火の車で、東の宮殿から空に舞いあがり、大空をかけて、西の宮殿に帰るのが日課でした。
プロメテウスはあるとき、赤々ともえる馬車の車輪にたいまつを近づけて火をぬすみ、それを人間にわけてあげました。
プロメテウスから火をもらったおかげで、人間のくらしはとても便利になりました。
でも、神様の中で一番えらいゼウスはカンカンです。
「 人間たちに大切な火を贈るとは、いったいどういうことだ! 」
ゼウスはプロメテウスを山に鎖でつなぎ、そのからだをワシに食べさせるという罰を与えました。
ゼウスは人間たちにも罰を与えようと、パンドラという女性をつくり、プロメテウスの弟エピメテウスのところへいかせます。
エピメテウスは美しいパンドラをすぐに好きになり、二人は結婚しました。
さて、エピメテウスの家には、プロメテウスがおいていった小さな箱がありました。
決してあけてはいけないといわれている箱です。
「 箱には、人間にとってよくないものが入っている。 絶対にあけてはいけないよ 」
エピメテウスのいいつけをパンドラはしばらく守っていましたが、気になってしかたありません。
あるとき、とうとうその箱をあけて、中をのぞいてしまったのです。
すると箱の中から、痛みや苦しみ、うらみ、憎しみ、ねたみなど、人間が楽しくくらせなくなるような災いがいっきに飛びだしてきました。
おどろいたパンドラはあわててふたをしめましたが、もうまにあいません。
たくさんの災いは、世界じゅうに飛んでいってしまいました。
そのとき、ふたをしめた箱がかすかに動きました。
そっとふたをあけてみると、箱の底にひとつだけ残っていたものがありました。
それは「希望」でした。
プロメテウスがそっと中にいれておいてくれたのです。
そのおかげで、たとえ戦争や病気などの悲しいこと、苦しいことがあっても、私たちはいつも心に「希望」をもって生きることができるのだといわれています。 』
では、物語はここで終了です!
如何でしたでしょうか?
以前に知った内容と同じでしたでしょうか?
あるいは、少し違う感じを受けたでしょうか?
それとも、初めて知ったでしょうか?