【 異例の付言に更なる光明を見出す 】
2023年9月、大阪高裁は判決で、琉球民族は沖縄地方の先住民族と認めました。
しかし、判決文では次の理由で、原告の控訴を棄却しました、、、
大阪高裁:
『 原告らには遺骨の所有権は無く、返還を請求する権利は無い。 』

ただ、前例の無い事を忌避する傾向が高いにも関わらず、
裁判長は判決文に・・・
異例の付言を添えた・・・
という事態になりました。
それが、この時の裁判を最後に定年退官した、裁判長の大島眞一さんです。
そして、大島さんは訴訟での解決には限界があるが故に、子孫を含めた関係者同士での話し合いを促すと共に、次の付言を添えました、、、
大島さん:
『 遺骨の本来の地への返還は、現在世界の潮流になりつつあると言える。 持ち出された先住民の遺骨は、故郷に帰すべきである。 』
更に、日本人類学会が京都大学へ提出した要望書に関しても、一審の京都地裁とは真逆とも呼べる、次の批判をしました、、、
大島さん:
『 (要望書に)重きを置く事が相当とは、思われない。 』

【 他人事の張本人 】
要望書は、当時の日本人類学会の会長の名で提出されました。
その人が、人類学の第一人者と言われる篠田謙一さんでした。
そして、現在の篠田さんは、国立科学博物館の館長をしています。
しかし、番組が取材を申し込むと、時間が無いと拒否されました。
そこで、2025年7月、篠田さんの講演会終了後に、番組は直接取材を試みました、、、
番組:
『 そもそも、人骨の研究は誰の為にある研究なんですか? 』
篠田さん:
『 誰の為? 全ての研究が誰の為にやっているのかという質問と、あまり変わらない気がしますけど。 研究は何の為にやるのかって言われると、「 謎を解く為 」だと思います。 』
番組:
『 遺骨を国民共有の文化財とする事に、批判的に捉える人をどう思いますか? 』
篠田さん:
『 それは捉える方がいても、それはしょうがないですよね。 それは個人の考え方ですので。 ただ、子孫が特定出来ないような場合は、基本的には「 文化財 」として考えていくのが、私達の立場ですので。 家系図って一系統しか見ていないので、実際の子孫は一杯いますよ。 だから、そういう風に特定出来ないものは、みんなで管理しましょうという話だと思う。 』
先ほど紹介した『 亀谷さんは家系図から王族(遺骨)の子孫である事は、既に判明しています。 』との箇所に加え、子孫は亀谷さんだけでは無いとの推測から、遺骨は「文化財」なので返還請求に応じる必要も義務も無いと、篠田さんは言いたかったのでしょうか、、、

【 バカにするにも程がある 】
このような裁判の経緯があった中、亀谷さんと松島さん達の原告は最高裁に上告せず、京都大学と話し合いによる解決を求めて来ました。
しかし、2025年5月、京都大学が今帰仁村から持ち去られた遺骨を、原告に一切知らせる事なく、村に密かに返還していた事実が明らかになりました。
しかも、無条件の「返還」ではありませんでした。
なぜなら、京都大学と村の教育員会が交わした文書が、《 「移管」協議書 》となっていたからです。
そして、「移管」する為の条件の一つが、
遺骨は墓に戻さず・・・
今後も学術資料として(村の施設で)保管する・・・
というものでした。
このように、京都大学は然り、子ども達の教育を預かる村の教育委員会の仕打ちに対し、憤りを感じつつも、理性で持って松島さんは話します、、、
松島さん:
『 私達の存在を無視し続けているという怒りがあったと共に、96年振りに遺骨が元の村、今帰仁村に戻ったという事で、安堵の思いがしました。 』

更に、昨年、京都大学等はオーストラリア政府の求めに応じ、オーストラリアの先住民の遺骨を初めて返還しました。
そして、オーストラリア政府は公表したものの、京都大学等はメディアに公表しませんでした。
そして、オーストラリアの先住民の研究の筆頭者である、神戸大学名誉教授・芦屋大学学長の窪田幸子さんは、次の通り批判します、、、
窪田さん:
『 秘密裏に行われたような形になっていましたよね。 それは恥ずかしい事だなと、国際スタンダードからすると思いました。 オーストラリアやアメリカやニュージーランドを見ていますと、今、先住民の骨を研究の為に保持しようと表立って言う人は、全くいなくなっています。 』
同じく去年6月、亀谷さんは遺骨が保管されている、村の収蔵庫を訪れました。
つまり、
96年の時を経て・・・
先祖(遺骨)との対面が初めて許可された・・・
という事です。
しかし、頭蓋骨を含む遺骨には、標本番号が書かれていたりなど、
まさしくモノ扱い
をされていた痕跡が、至る所に見られました。

そして、番組は京都大学に対し、「返還」ではなく「移管」した遺骨について、
今後・・・
どのような研究を・・・
いつから行うのか・・・
などの質問をしました。
すると、京都大学の回答は、以下の通りでした、、、
京都大学:
『 お伝え出来る事はありません。 』
遺骨を「移管」したのだから、もはや「国民共有の文化財」ではないので伝える必要も義務も無いと、京都大学は判断したのでしょうか、、、

【 同じ穴のムジナを分けるものとは 】
京都大学と同じ問題は、東京大学でも起こっていました。
1904年、世界的人類学者と呼ばれた東京帝国大学の鳥居龍蔵が、琉球人の墓から無断で遺骨を持ち去りました。
そこで、昨年7月、松島さんは東京大学の博物館を訪れ、保管されている遺骨に関する情報開示を求めました。
すると、翌8月、東京大学は保管している遺骨を改めて調査し、返還方針を明確にする為のタスクフォースを設置すると宣言しました。
更に、
無断で遺骨を持ち去った事実を認め・・・
大学のHP上で謝罪する・・・
という行動を取りました。
そして、タスクフォースの座長で、東京大学理事・副学長の林香里さんが、番組に対し次の通り答えました、、、
林さん:
『 人間がどこから来て、どういう生活をしていたのかを、知りたいという欲求の中で、色々な研究がなされて来た訳です。 ただ、歴史の中で、全く間違いが無かったかというと、そんな事は無いです。 そこで、間違えた所は襟を正し、そして何よりも重要なのが、これからは人間の尊厳や、お心を傷付けるような事までして、科学の発展を推進するような事が無いようにしなくてはいけない。 』
そして、同じく昨年12月、東京大学は沖縄県由来の遺骨を少なくとも31点保管している事実と、その経緯を情報開示しました、、、

【 諭(さと)す事の本当の意味 】
番組は、先ほどの大阪高裁の裁判長を退官した大島さんに、改めて取材を申し込みました。
すると、個別案件への回答は控えながらも、感想という意味で、書面で回答をしてくれました。
そして、当時の遺骨を持ち去った研究者の姿勢に関し、大島さんは次の通り話します、、、
大島さん:
『 そこに見えるのは、強者(日本)が弱者(琉球)を支配する姿であり、墓に眠る人骨を持ち出すことに対する躊躇いは、微塵もない。 人類学の研究の為に、大学で「 丁重に扱われただけでも、冥加であろう 」という意識が見える。 本件で最も重要だと思うのは、「 遺骨は何も語らない 」という事である。 しかし、遺骨は、単なるモノではない。 その遺骨にとって、如何なる地で眠る事が、最もふさわしいのか、考えてみる必要がある。 遠く離れた大学の収蔵庫内で眠り続けるのか、故郷の琉球(沖縄)に帰るのか、答えは自ずから明らかである、と思う。 』

そして、番組放映時点での京都大学は、
未だに謝罪すらしていない
という状況です、、、
では、気分と視点をガラッと変え、《 メタファー(物語や比喩・暗喩) 》として『 頭のいい子を育てるおはなし366 』(主婦の友社)から、ギリシャ神話の「 スフィンクスの謎かけ 」を眺めます!