心に余裕を生む「いいかげん」の活用法 ~土井善晴 氏の一汁一菜から学ぶ~

【 朝ご飯で夫婦喧嘩が勃発 】

山岡士郎と栗田ゆう子の二人が、晴れて結婚式を終えました!

そして、翌日から二人の新婚生活が始まると共に、1週間の休暇も始まります。

二人は共働きであるが故に、家事も分担する事で合意していたものの、「休暇の間は自分に食事を作らせて欲しい」と、ゆう子が朝ご飯を作る事になりました。

 

ゆう子:
『 山岡さんは一人暮らしで自炊する事も多かったから、お料理をするのも慣れてるでしょうけど、私は母に甘えちゃって、何でもやって貰ってたから、少しお料理の腕を鍛えたいのよ。 特に朝ご飯なんて、ほとんど作る機会がなかったもん。 』

 

山岡も賛同し、「美味しく楽しい」朝ご飯の場と思いきや、、、(笑)

 

 

最初の料理は、本物の素材で作った、豆腐とわかめの味噌汁です!

山岡:
『 ふうん・・・ 俺は、味噌汁の実は1種類だけの方が好きだ。 実をいくつも入れると、味がにごる。 それに、豆腐の切り方が小さすぎる。 これじゃ豆腐のうまみが抜けちまう。 お吸い物じゃないんだから。 』

 

次は、これも素材の良い、キュウリの漬物です!

山岡:
『 この切り方(放射状の八つ割り)がね・・・ ほら、箸でつかみづらいから、すぐ落ちてしまうだろう? よく料理屋なんかでこう切るけどさ、形はしゃれて見えるかもしれないけど、食べる方は災難だ。 斜めに薄切りにした方がいいんじゃないの? 』

 

次は、良かれと思って、卵の黄身を添えた納豆です!

山岡:
『 俺は生卵を納豆に入れるのは嫌いだ。 卵の匂いが納豆と混ざると、生臭くてさ。 納豆のこの味と匂いが好きで食べてるんだもん、これに卵の味と匂いが混ざるのは、騒々しくっていけない。 』

 

次は、一匹丸々のサンマの干物です!

山岡:
『 俺、サンマの頭って嫌いなんだ。 なんか蛇みたいでさ。 俺だけじゃないぜ、そう思うの。 普通サンマの干物は頭を落として焼くもんだろ? 』

 

 

ゆう子は謝りながらも、気持ちを入れ替えて、翌日の朝ご飯に取り組みました!

 

最初は、豆腐だけの味噌汁です!

山岡:
『 ふうん・・・ (豆腐が)大きすぎるよ、これは! 』

 

次は、アジの干物です!

山岡:
『 このアジの干物変わってるね。 頭がないアジの干物って、首なし死体みたいで、気持ち悪いじゃないか。 』

 

次は、カブの漬物です!

山岡:
『 むう・・・ このカブの漬物、こう薄く切ったんじゃ、カブの歯ごたえが楽しめないよ。 放射状に八つ割りに切るもんだよ。 』

 

終いには、、、

山岡:
『 山椒の粉ある? 味噌汁にふるんだ。 』

 

ゆう子:
『 ひどすぎるわ! いいかげんにしてよ! (中略) 私、一生懸命してるのに、ひどいわ! あなたがこんな乱暴で残酷な人だなんて! 』

 

 

こうして、夫婦喧嘩が勃発しますが、ゆう子の「反応も言い分も」当たり前でしょう(笑)

しかも、山岡は「悪気」を感じていないのが、厄介です(笑)

 

【 心の余裕を生む「いいかげん」 】

二人が住む新居の1階に、はるさんが女将をする小料理屋があります。

すると、山岡が一人でやって来た事で、はるさんは二人に何かあったと感づきました。

 

そして、山岡は朝ご飯の経緯を話しつつも、自分の言い分は間違っていないと強情を張ります。

そこで、はるさんはゆう子を呼び出し、二人に料理を食べさせます。

 

はるさん:
『 今、お出しした料理は、みんな共通点があるのよ。 私のお店には、この辺の会社で働いている独身男性や、単身赴任で地方から来てるお父さんなんかがよく来るの。 これは、そういう人たちに頼まれて作った母親と奥さんの味、いわばなつかしい家庭の味、という共通点があるのよ。 』

 

山岡とゆう子も、料理の共通点に合点がいき、納得しました。

 

 

はるさん:
『 私も、人によってあまりに違う家庭の味を持っているから、驚いたのよ。 考えてみて下さい。 グラタンが母親の味、という人と、ニシンと昆布が家庭の味、という人が結婚したら、どうなるか? 』

 

山岡とゆう子は、ハッとしました、、、

 

 

はるさん:
『 結婚というのは、違う家庭で育った者どうしが、両方の家の味やしきたりを持ち寄って、新しく自分たちの味としきたりを作り上げるものでしょう? 相手の家庭の味としきたりを無下に否定してしまったら、どうなるでしょうね? 』

 

山岡とゆう子は、ぐうの音も出ません(笑)

 

 

はるさん:
『 結婚する前に、すいぶんよくお互いのことを知り合ったと思っていても、結婚すると、まだまだ相手の知らなかった部分がどんどん出てくるものなんですよ。 でも、だから人生って楽しいんじゃないかしら?(笑) 』

山岡:
『 ありがとうございました。 よくわかりました。 俺が、俺の流儀を一方的に押しつけたのが悪かったようです。 』

ゆう子:
『 私、お料理のことでは、どうしても彼に及ばないというひがみがあったから、あんな風にヒステリックに反応してしまったのです。 』

 

そして、ゆう子は素直じゃなかった点を認め、山岡も無神経だった面を謝り、二人は仲直りしました(笑)

 

 

では、メタファーも終了し、締め括りです!