【 目指す方向は一致するものの 】
ところで、TOPICSでは、
《 (過度な)二者択一に陥らない 》
という視点を伝えています。
そこで、住民側(2人)の立場と、保護局側(2人)の立場の、
見ている景色や光景は・・・
「同じ」なのか???
あるいは、「違う」のか???
という視点から眺めて下さい!

農地の見張りをしていた父を殺された男性が話します、、、
男性:
『 私は何も怖れない。 何も悪い事などしていない。 明日は私が殺されるかもしれない。 殺されるのは怖くはない。 私の為ではない。 国の為に声を上げているんだ。 衝突の解決を求めているだけだ。 近くに野生動物保護局がある。 動物の保護が任務だと言う。 ゾウが殺された時は、すぐに村人を捕まえて最大限の罰を与える。 何故、父がゾウに殺されても(現場に)来ない? 調べに来る事も出来ないのか!? 私の苦しい気持ちが分かるか? ここに来るくらい難しくないはずだ。 保護局が改善しなければ、解決策は永遠に見つからない。 』
農地の見張りをしている男性が、同じく『 保護局は役に立たない 』という主張に加え、話します、、、
男性:
『 追い払っても、ゾウの行く当てもない。 森もない。 解決策がないんだ。 政府は私達の事など、何も考えていない。 これは解決出来るような問題じゃない。 もし、解決したければ、一つだけ方法があります。 全部殺すか、外国に売り飛ばすか。 この国からゾウを消す事だ。 』

一方、保護局で長年指揮を執って来た副局長が話します、、、
副局長:
『 我々の本来の仕事は野生動物の保護・管理、生息地を守り、観光を発展させる事です。 しかし、現在は人とゾウとの衝突の対処に専念せざるを得ません。 誰もがこの問題の責任は、我々が負うべきだと考えています。 しかし、野生動物の問題を超えて《 人間の問題 》になりつつあります。 』
更に、ここ10年、衝突による死亡者数が急増している事に対し、同じく副局長が話します、、、
副局長:
『 衝突の要因は大規模開発事業、違法なゴミの投棄、無秩序な土地利用、自然の中のゾウの生息地の喪失。 衝突の要因の内、75%は人間側の問題なのです。 何の理由もなくゾウが人里に入り、衝突を起こす事は滅多にない。 人間の不用意な行動が衝突を招いているのも事実です。 』
そして、実際に現場に赴く隊員の苦悩です、、、
隊員:
『 スリランカはゾウと生きて来た国です。 互いを攻撃する事なく、同じ場所で暮らせるように。 私達も住民もゾウも、ここで生きて行くしかないのですから。 』
ところで、ここでの「立場が違う両者」の見解には、
正しい面もあれば・・・
違っている面もあるかもしれない・・・
更に、程度の差も関係しているかもしれない・・・
などの視点が成り立ちますが、二者択一に「重ね合わせて」考えてみて下さい、、、

【 自然に反する管理が仇となる 】
1959年、スリランカ政府は野生動物保護委員会を設置しました。
そして、野生のゾウを国立公園や保護区の「内側」で管理する方針を立てました。
ただ、このような方針を「立てざるを得ない」背景にあったのが、
植民地時代のイギリス人によるゾウの乱獲
の影響でした。
更に、
保護区の内側での管理を重視する「国際的潮流の声」・・・
いわゆる、「グローバルスタンダード」が幅を利かせた・・・
なども背景の「一端」です。
故に、政府は人里から保護区の内側へ、
ゾウを追い払った(良く言えば移送した)
という事です。
更に、ゾウを保護区の「外側」に出さない為に、電気柵を張り巡らしました。

しかし、近年ではゾウが電気柵を破壊し、移動するケースが後を絶ちません。
つまり、
人間とゾウのイタチごっこ・・・
になっているのが実状です。
なぜなら、
ゾウには、それぞれの「ホームレンジ」がある!!!
からです!
そして、裏を返すと、
自然に反する管理を人間がしている!!!
からです!

スリランカに生息するゾウのホームレンジは、平均で200~250キロ平方メートルの「広さ」があります。
そして、
ゾウの一生の全ては・・・
ホームレンジの内側で完結・・・
します、、、
つまり、ゾウにとって、
ホームレンジの内側で生まれ・・・
食を得て成長し・・・
死んでいく・・・
というのが「自然の流れ」だからです、、、

【 共存を可能にする道 】
しかし、ホームレンジを「遮断」するかの如く、
人間の為の道路が整備
されました。
しかも、保護区の内側に生息するゾウは、全体の3割に過ぎません。
つまり、
人間の一方的な都合で・・・
人間とゾウが「混在」する場所が数多く生まれ・・・
その場所すらも、既に満杯になりつつある・・・
というのが実状です。

そこで、スリランカ保護研究センターの博士が、「共存の道」を模索しました!
そして、博士は「発想を転換」して、
ゾウを管理する為に、ホームレンジを「囲った」電気柵を・・・
逆に、人間のコミュニティを「守る境界」として・・・
電気柵の「役割を転換」した!!!
という措置を取りました!
これにより、電気柵の境界と境界の「境目」に、ゾウが移動出来る通り道が確保され、衝突が減少しました。
そして、博士は話します、、、
博士:
『 ゾウが何を求めているかを、理解するのが重要です。 《 柵を壊すな 》と言っても伝わらない。 ゾウの欲求を満たす事が出来れば、私達が土地を整えて、ゾウを望む方向へと導く事も出来る。 そして、平和的な共存を実現出来るのです。 』

【 全ては経済が発端 】
スリランカで人間とゾウの共存が「難しくなった」発端の一つが、世界最大級と呼ばれ、1970年に着工された、
マハウェリ開発計画
です。
この計画の実行の為に、50年で「人口」は3倍に増え、人間の「食糧と雇用」を確保する為に、広大な森林が「伐採」されました。
そして、日本もODA(政府開発援助)などを通して支援しました。
更に、灌漑用のダムや貯水池を築き、人々に移住(入植)を奨励したので、農地が「急速に拡大」しました。
当初は、人間とゾウの間に「適切な距離」が保たれていたので、衝突もほぼありませんでした。
しかし、農地が拡大するにつれ、
農作物等にゾウが引き寄せられる・・・
ようになりました。
そして、近年では政治家と「手を結んだ」大手企業や外国資本が、バナナ園などを「新たに造成」するなど、
ゾウの生息範囲は益々減少・・・
しています。

これらは「開発」と称され、国際機関も「後押し」しています。
住民は農地を取り上げられ、新たな工場等に雇用されても、「雀の涙」ほどの給与しか支払って貰えません。
つまり、政治家と大手企業や外国資本が、
利権の全てを・・・
結託して吸い上げている・・・
というカラクリです、、、
こうして、スリランカの経済は、
海外への輸出に「依存し過ぎた」が故に・・・
2022年に「国家財政の破綻」を宣言した・・・
という「末路」になりました、、、

そして、先ほどの博士は話します、、、
博士:
『 激しい音の出るアリウェディを使いますが、ゾウはそれに反応しなくなって来ている。 このままでは《 ゾウを撃つ 》しかなくなってしまう。 人の攻撃が激しくなるたび、ゾウはそれに適応して来ました。 攻撃を激しくすれば、ゾウも逃げる。 しかし、効果は薄れていきます。 攻撃的な方法は、問題を益々激しくするだけです。 アリウェディを使っても、ゾウを撃っても、問題は解決しない。 ゾウが更なる攻撃で反応するからです。 (政府は)問題に対する一時的な解決策だと考えているのでしょう。 (しかし)一時的な解決策ですらない。 衝突的な手段を選べば、明日は更に深刻な事態を招く事になります。 』
では、番組の紹介は終了し、締め括りに入りますが、ここで「もう一度」、博士の先ほどの話を「繰り返し」掲載します、、、
博士:
『 ゾウが何を求めているかを、理解するのが重要です。 《 柵を壊すな 》と言っても伝わらない。 ゾウの欲求を満たす事が出来れば、私達が土地を整えて、ゾウを望む方向へと導く事も出来る。 そして、平和的な共存を実現出来るのです。 』

そして、同じく繰り返しですが、今回のテーマは、クマによる被害を防ぐ方法ではありません!
また、実際にクマに「襲われそうな」ケースでは、「自分の身を守る」事も大切で必要なのは、論を待ちません、、、
そして、クマとゾウでは「生態も性格も」違うのに加え、日本とスリランカでは環境も事情も然り、宗教を含む問題の背景も「違い」ます、、、